高校三年。今はもうない京都書院二階で一冊の本に出会った。植草甚一「映画だけしか頭になかった」まるで、映画を観ながら思いのまま書いた文章。リズムとビートが聴こえてくる、この人に導かれ海外文学、JAZZ、ROCKの魅力を浴びせてもらった。と同時に、これらの著作を出版していた犀のマークの出版社、晶文社にも魅入られるように、ここの出版社なら信用できると思い買い込んだ。レイ・ブラッドベリーもナット・ヘントフも、山下洋輔も、川本三郎も、双葉十三郎もこの出版社だった。 

 そして、大学。当時まだ学園紛争の残り火が燃えていた時代。友人たちが集会に行く中、背を向けて映画館とJAZZ喫茶に入り浸りの日々。これでいいんだろうか?  そんな時、これでいいんだ。好きなことだけに目を向けていいんだ。と思わせてくれたのも、やはり晶文社の本だった。その後、社会人になり、ひょんなことから、書店業界に足を突っ込む事になったのだが、やはり晶文社は気になる出版社だった。  もう、植草甚一の新刊は出ていなかったが、坪内祐三との出会いがあった。彼の「ストリートワイズ」を読んだ時、あのリズムとビートを思い出し、好きな事だけやってれば良いんだ的ウキウキ感が蘇ってきた。                 

来春、古本屋を開業する。願わくは、このウキウキ感のある書店を目指したい。 古本市に行くと、つい犀のマークの本に手を出てしまう。どうも、このマークは私には麻薬みたいな存在なのかもしれない。(店主)          

Tagged with: