中山可穂の小説に一時入れこみました。何故って。それはタイトルに能の名曲を使い、その筋を踏襲して新しい物語を作っていたからです。

「悲歌」(角川書店2009年 700円)に納められているのは「隅田川」、「定家」、「蝉丸」の三編。お能の事ご存知ならよくお分かりだと思いますが、能の名作ばかりです。でも能の事全く知らなくても、大丈夫。恋愛小説の面白さを楽しめます。特にお薦めは、最後の「蝉丸」。結婚して幸せな男が、かつて溺愛した青年のことが忘れられず、妻をほっとらかしにして、「彼は僕のすべてだ」と言い放ち、アンコールワットの遺跡をさまようお話。この人の小説には、男性同士、女性同士の性愛描写が登場します。特に、女性同士の描写は、とても濃く、ページとばしそうになる事があります。タイトル忘れましたが、好きな女性探して砂漠をさまよい歩くヒロインのお話は、映画「シェリタリングスカイ」さながらの喉が乾く事この上ない砂漠放浪小説ですが、のめり込みそうになります。

 

多分、この人のテーマはかなわぬ恋、禁じられた愛を様々な側面から描くことにあります。やはり、能のモチーフを散りばめた「卒都婆小町」、「弱法師」、「浮舟」などその代表作(文庫本「弱法師」200円)でしょう。ただ、熱愛シーンの描写が一本調子になることもあり、その辺りの作家の技術力の一層の向上をファンとしては望んでいますが、先ほどご紹介した「悲歌」の三編はラストシーンの切なさが見事ですので、推薦できます。

少し、じめ〜っとした湿気漲るお部屋で、ドアーズの”The End”でもお聴きになりながら、お読み下さるとよろしいかと思います。

 

 

 

 

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