若い時、東京のライブを彷徨っていました。

渋谷で、やる気なさそうに「たばこの煙」を歌っていたのは五輪真弓(だと思うが、記憶が定かではない)、新宿PITINNに渡辺貞夫ライブを聴くために並んでいた時、前にいたのは渡辺香津美(だと思うが、記憶が定かではない)、どこの店か忘れましたが、ミカン箱に座ってきいたのは浅川マキ+山下洋輔(だと思うが、記憶が定かではない)と彷徨していました。で、六本木のバーで、聴いたのが酒井俊。

へらへらと女性同伴で甘〜い一夜を過ごそうという助平根性で飲みに入ったお店で、歌っていたのが彼女でした。ぺちゃくちゃ、くだらねぇ〜話で女性の気を引くつもりが、彼女の声に引っ張られてしまいました。

強い表現力、ブルース感覚一杯の歌声。圧倒されてしまいました。それから、ジャズ喫茶で彼女のレコードをリクエストしたり、買ったりしていました。(写真がそれです)それが、もう30年程前の話です。その彼女と再会しました。正確に言えば、彼女のCDで再会しました。

 

タイトルは”A few little things”す。べてカバー。といってもジャズスタンダードを歌い上げたありきたりの作品ではありません。曲を紹介します。「上を向いて歩こう」、「見上げてごらん夜の星を」「ヨイトマケの唄」といった日本の名曲、B・ディランの”I Shall Be Re”leased”、スティングの”Fragile”、そしてトム・ウェイツの”Grape Fruit Moon”とやるなぁーという選曲です。野口雨情&本居長世の「四丁目の犬」なんて曲も入っています。はっきり言って正統的ジャズにあらず。でも、傑作です。私は堀内敬三の「アラビアの唄」が気に入りました。

編成もユニーク。ドラム、ベース、チューバ、バイオリン、ギター、バンジョー、ベースが絶妙にバックをサポート。ジャズとか、ソウルとかジャンルなんてどうでもよろしい。人を引きつけて話さない力強さと、儚さ。数十年前に、同伴の女性をほっとらかしにした一時を思い出しました。

スタンダード曲を見事に解釈して、正確に表現する歌手はたくさんいます。しかし、あがた森魚、バーブ佐竹(古いですな)が歌う、夜の寂しさと孤独を、歌えるシンガーはそうはいません。

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