これは、俳優永井智雄(1914〜1991年)の本のタイトルです。舞台、映画を問わず、俳優の本はすべて面白いです。

永井智雄って言っても、ある年代以下の方はご存知ないかもしれません。同社大学卒業後、俳優座へ入団、その後、舞台、映画、TVで活躍した俳優です。1958年放送開始のNHKドラマ「事件記者」(このドラマを見て、NHK記者になったのが、ご存知池上彰氏とか)の相沢キャップ役で忘れられない役者ですが、私には社会派の映画で、架空の新聞社「毎朝新聞」キャップ役(いつも、毎朝というのが笑えます)でお馴染みの人でした。彼の「レポート俳優」では、そのタイトル通りに舞台役者としての日々がレポートされています。興味深いのは、60年安保、70年安保そして、時の首相佐藤総理の訪米を新劇人としてどう見ていたかが綴らていることです。1930年代に永井は治安維持法違反容疑で起訴され、拘置所で2年間を過ごした経験を持っています。この時代の舞台役者が政治と緊密な距離にあったことがわかります。

最近、大阪市長の逆鱗に触れて週刊誌連載の記事が中止になった、佐野眞一の「怪優伝ー三国連太郎」は、佐野らしい直球ど真ん中でぐいぐい押して来る役者伝です。面白いのは、三國が選んだ自分の出演作10作を鑑賞しながら対話した部分で、日本映画黄金時代のエネルギーが再現されています。転んだら真っ逆さまに海におちてしまう断崖絶壁でカメラを回した内田吐夢監督の鬼気迫る情念が作り出した「飢餓海峡」の話を読むと、もう一度この映画を観たくなります。また、勅使河原宏作品「利休」では秀吉に扮した山崎努が、セットで使用されていた600万円茶碗を本気で投げつけようとしていた事を取り上げて、こう話しています

役者から監督まで、みんな常軌を逸した人間ばっかりだったですよ

こういう激情吹き荒れる役者さんの本の一方で、笠智衆の「俳優になろうか」は、読んでいるとホッとさせてくれます。まるで、五月の穏やかな太陽に身体がポカポカされるような、ほんわかの一冊です。中に入っている笠さんの写真も、お人柄が良く出ていて、見ているだけで気分良くなる一冊です。文庫なので、通勤、通学の途中でパラパラめくってみるといいかも。三國の本がピリ辛中華料理とするなら、笠さんの本は、さしずめ温かい雑炊です。どちらも、食べたくなりますよね。

役者さんの本、いろいろ集めてます。こんな本あるよって、ご意見あればメール下さい。

 

 

 

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