秋恒例の、智恩寺での古書市。初日朝から行きました。お、前にはKさんご夫婦が、、私の後ろにはCさんが。遠くに見えるは善行堂さんか?

さて、各ブースを回り出して最初に目に止まったのが、二冊の吸血関連の本でした。一冊は角川選書「ドラキュラ伝説」、そしてもう一冊は種村季弘の「吸血鬼幻想」(河出文庫/初版)でした。吸血鬼かぁ〜。美女の首筋に食らいつくなんて、なんて幸せな男なんだろう〜とお寺の境内で、一時淫らな幻想にふけっておりました。淫らな幻想の原点は78年発表のヴェルナー・ヘルツォーク監督の「ノスフェラトゥ」。犠牲になるイザベル・アジャーニのドレスの肩の辺りで白い肌を露出していて、その肩を覆い隠すようにドラキュラ伯がマントで抱きしめる。羨ましい…….。

レイモンド・T・マクナリー&ラドゥ・フロレスク「ドラキュラ伝説」はトランシルヴァニアに15世紀実在したドラキュラ伯爵と、やはりこの地方に伝わる吸血鬼伝説、そして19世紀末にブラム・ストーカーが、巧みにこの二つを結びつけて、作り出した文学史上のドラキュラ伯爵を産み出すまでを追っかけた労作です。キリスト教が、反キリストの土着信仰打破のための宣伝、情報操作のためのドラキュラ伝説という単純なものではなく、恐ろしく複雑な要因が絡み合って産まれた吸血鬼=ドラキュラが一人歩きするまでが丹念に描かれています。

いっぽう、種村季弘の本は、「吸血鬼詩アンソロジー」、「吸血鬼の画廊」、「吸血鬼の眼、吸血鬼の言語」等この作家らしい、いかにもの章が並び、最後には吸血鬼文献、吸血映画一覧まで載っています。詩のアンソロジーでは、ノヴァーリスやハイネの詩の一部が抜粋されています。決して読みやすい文章ではありませんが、数多く挿入されている絵画、映画等の写真が悪魔的で、淫乱な情緒を盛り上げてくれます。髑髏姿の人物に抱きかかえられているハンス・B・グリーンの裸婦像「死と乙女」、エルンストの「慈善週間」などが、ざらついた紙面で後ろめたい欲情に火をつけます。お寺の古書市でいけないことですね。お部屋で、蠟燭の火だけを明かりにして、一人深夜にお読み頂くにはとても素敵な二冊です。

ところで吸血鬼映画って海外のものと思っていたら、日本にもいました。あの岸田森が演じていました。映画のタイトルは忘れましたが、何故か、ショートカットの女性ばかりを襲っていました。

 

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