私は、脈絡なく歌い、踊り出すミュージカルのファンです。40年代アメリカのミュージカルの名シーンを集めた「ザッツ・エンタテイメント」なんて、ビデオ→レーザーディスク→DVDBOXと集め、いまだに観ています。また、この時代のMGM製のミュージカル映画へのオマージュ一杯のフランス発のミュージカル「ロシュフォールの恋人たち」もDVDBOXまで揃え、サントラはCDに始まり、オリジナルフランス盤のレコード(高かった)まで買いあさり、密かに楽しんでいます。

しかし、物語に重きを置いた作品、例えば「サウンド・オブ・ミュージック」なんかは、ご免なさいです。(最後まで観たことありません)だから、その手の作品はず〜っと敬遠してきました。けれど、大学時代に日本で公開された「ジーザス・クライスト・スーパースター」は脳天直撃でした。映画ならではの凝った演出もさることながら、黒人の演じるユダと、ヒッピーカルチャーの体現者みたいなイエスの二人の友情と裏切り、そしてちょっとホモセクショナルな愛情関係までの描き方に力がありました。ラスト、蘇ったユダが、昇天するイエスに向かって、お前はスーパスターになるつもりだったか、お前は誰だ!と批判をぶつけるシーンは圧巻でした。この映画に説得力があったのは、二人の役者のアップに本物の迫力があったからです。人としての弱み、哀しみまで見事にカメラは捉えています。大事なのは説得力です。

そして「レ・ミゼラブル」。いや〜映画の王道です。ミュージカル映画なのに、のっけから圧巻のCG画面。骨太な物語を嘘っぽくしないために、監督は口パクで、歌を後から付けることをせず、その場で歌わせ、それを収録するこに徹したそうです。巧みに動くカメラが、正面から、サイドから、或は、頭上から役者を捉えます。俳優達は疾風怒濤の登場人物たちの人生の悲劇を、一つ一つの表情に、歌に託します。その説得力。「人間をまるごと描く」ことが映画の王道とするならば、この作品はその仕事を完璧に遂行しています。その役者の内在している力と、歌い出される言葉がシンクロして感動を与えてくれます。2時間40分。映画は力強く人間を描いていきます。ぜひ、大きなスクリーンで体験してください。

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