山本容子著「本の話 絵の話」(文藝春秋/初版1000円)を読んでいると、彼女が本の装幀に関わるきっかけが書いてありました。

1978年、それまで自分で物語を作っていたのと反対に、他人の物語を作品に仕上げることを始めます。その最初の作家が、好きだったトルーマン・カポーティでした。「冷血」のように極めて暴力的であるかと思えば、「ティファニーで朝食を」みたいに繊細な都会小説を書くカポーティに、彼女の資質が合ったのでしょうか、様々な作品を装幀していきます。それがある編集者の目に止まり、村上春樹が翻訳するカポーティの「おじいさんの思い出」、「あるクリスマス」、「クリスマスの思い出」の三冊に銅版画をつけることになり、ここから本格的に本の世界に関わっていきます。(三冊とも在庫あります)

というふうに、本と作家の話があれこれ語られていきます。随所に彼女の作品が挿入されていて、それを比べながら読むと引き込まれます。「人の話」篇では、多くの文人の顔と短い文章が添えられています。私がいいな〜と思ったのは、石川啄木。「言葉づかいより、筆づかいのほうが、活発だったように思う」で始まる啄木の印象は、たしかにね、と思わせます。啄木の前の項は、チャペックです。「笑顔が素敵。特に仔犬のダーシェンカを見守る時と、サボテンを見つめる目。」。そうですね、ダーシェンカを見つめる視線は素敵です。こんな風に72人の内外の文士が登場しますが、中でも立原正秋の銅版画には笑えます。

山本容子の作品を楽しみながら、多くの文学作品も楽しめ、ちょいと読んでみようかという気にさせる一冊です。犬好きの容子さんらしく、随所に犬が登場してそれもまた楽し。我が家の三女ラッキーもご満悦です。

 

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