遅まきながら、アン・リー監督の「ライフ・オブ・パイ      トラと漂流した227日」をDVDで観ました。

インドで動物園を経営していた家族が、経営難から動物と一緒にアメリカへ。ところが、途中で嵐に出会い、船は沈没、生き残ったのは主人公のパイ少年と、獰猛なトラのリチャード・パーカー。(この名前については映画のHPの「シンクロニシティ」という項目に、興味深い記載があります)

「アバター」以来の壮大な映像美とか評価されていますが、いや、お見事!の一言につきます。原作は2001年に発表されたヤン・マーテルの「パイの物語」。CGやデジタルテクノロジーってこういう風に駆使する手段だったんですね。トラと200日あまり漂流する映画なんて、そう簡単には作れません。

しかし、この映画の真骨頂はCGではありません。ラスト20分の、救助された少年の語るストーリーです。未見の方のために詳しくは言いませんが、「物語」って何?というテーマが凝縮されています。同じようなテーマでは、ターセム・シン「希望の王国」、さらに古くはウェイン・ワン「スモーク」(原作はポール・オースター)でも提示されています。主人公の語る物語は真実なのか、虚構なのか。いや、物語における真実って何だろう?という、映画や小説の大きなテーマにまで関わってきます。そして、自分の物語を、それが本当であれ、嘘であれ、他人に伝えて、伝えられた側の頭の中で見事に映像化される面白さを伝えています。

この三本の映画、どれも主人公が第三者に語るという手法で進行します。もちろん、その第三者には観客自身が含まれています。あぁ〜巧い語り口だなぁと思うと、それだけで映画を観る楽しみが倍増します。上方落語の「ちょっと、こっちおはいり」という台詞からするすると落語の世界に入っていくとの似ています。そう言えばここに上げた映画すべて、オチも捻ってあって、上等の落語を堪能した気分です。

「ライフ・オブ・パイ」は、トラとの漂流記ですが、最初はここにオラウータン、シマウマ、ハイエナが同乗して、一人と四匹の命がボート上に存在します。そして、この「四」がラストに巧みに絡んできます。巧い演出でした。

Tagged with: