書店員は、新刊、古書問わず筑摩書房刊行の「ちくま文庫」が好きです。昔、文庫担当だった時などずら〜っと並べて自己満足に浸っていました。でも、文庫にしては1000円以上するのもざらにあり、思っていた程売れませんでした。今でも大型新刊書店の文庫棚を見ると、「ちくま文庫」は、やはり別扱いです。「岩波文庫」の横あたりというのが定位置です。もちろん、文庫なんで、元々ハードカバーの本があったものが多いのですが、その文庫化のセンスが、他の追随を許しません。

古書なら比較的安く買えます。私もせっせと集め、せっせと読みました。小川洋子「沈黙博物館」(350円)、橋本治「S&Gグレイテスト・ヒッツ+1」(300円)など小説にも良い作品がありますが、ここの文庫の真髄はノンフィクションでしょう。

近代ナリコ編集、文庫オリジナルの「女性のエッセイアンソロジーFOR LADIES BY LADIES」(600円)は、安井かずみ、鈴木いずみ、桐島洋子、向田邦子、岡崎京子、矢川澄子等29人のエッセイを集めたアンソロジー。先ず、この人選がいいし、目次が凝っています。各著者の顔写真とエッセイのタイトルがすっきりとレイアウトされていて、写真を見て、気に入った表情の女性の項目を読んでいくのも楽しい。よくライブを聴きにいった安田南の硬派な文章も好きでしたが、へぇ〜この人こんな文章書くんだと思ったのが「小森のおばちゃま」こと映画評論家小森和子。

「いまでも目を閉じると、その光景がはっきりとまぶたに浮かぶ。…………まだ空には明るさの残る夕暮れ、その中にけむるグリーンの光。それは夢のように美しいけれど、同時にたまらなく淋しさを感じさせる色だった……。」

これ、彼女の3歳のころの記憶らしい。そして、語られる彼女の生い立ち。なんか幸田文の本を読んでいるみたいでした。で、彼女のエッセイのタイトルが「小さな恋のメロディー」。定年間近の50代後半男性諸氏が、高校時代に映画館で号泣した(私です)、あの名作映画のタイトル!気に入りました。

どのエッセイも、個性的です。こういう文庫から、お好きな作家を見つけてゆくのもありですね。『「男はくさいくさい」といつも言っていた』という文章を書いた平野レミの「ド・レミ前奏曲」はもう抱腹絶倒です。しかし、まぁ、なんてものを握ってたん?彼女は!!

本の最後に出版社からのこんな文章が載っていました

「今回収録作品の執筆者のうち、安田南さんとご連絡がとれませんでした。ご本人もしくはご存知の方のご一報をお待ちしております。」

本が出たのが2003年。その6年後の2009年病で彼女はこの世を去りました。

 

 

 

 

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