講談社が昭和53年から発行を開始した「世界動物文学全集」が、ある市でミカン箱に入って売られていました。今西錦司、戸川幸夫、中西悟堂という動物学の権威三人による監修で全30巻を刊行!第一巻は、「ボーンフリー♫」の名曲で映画化されたジェイ・アダムソンの「野生のエルザ」とパウル・アイバーノ「いとしのゼンタ」という犬の話と、ロバート・マーフィー「雁よ愛に羽ばたけ」です。後者はアメリカの大自然の驚異と畏敬の念が色濃く出た文学で、ずっーと雁を見守り続けて来た孤独な少年が、旅立つ雁と別れるラストは、動物文学の典型です。

中に入っているチラシを見ていると、よくもまぁ集めたものだと編集者の努力に頭が下がります。

キプリング「ジャングルブック」、ジャック・ロンドン「野生の叫び声」、バイコフ「偉大なる王」等の、傑作をはじめとして、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」に影響を受けたと評価されたロバート・マーフィーの「滅びゆく川の物語」という、自然保護へ市民が参加することを後押しする作品も収録(4巻)されています。

第4巻の巻頭を飾るのは、ウォルト・モーレーの「熊と少年」です。少年と熊の友情を描いた小説で、60年代後半、アメリカでTVドラマ化された「クマとマーク少年」が放映されて、日本でも話題になりました。舞台は開発前のアラスカ。著者のモーレーはアラスカの荒涼たる大自然を心から愛しており、「そこでは何日旅を続けようと、誰一人、人間に会うことがない。静寂は計り知れぬほど深く」と書いていて、なんだか、星野道夫の文章を読んでいるみたいです。

さて、この手の動物文学ものは海外がお得意なのかもしれませんが、河合雅雄の「少年動物誌」(福音館・初版800円)はお薦めです。京都大学霊長類研究所教授の著者が、少年時代に丹波篠山の山間で体験した動物とのふれあいを、簡潔な文章で描いた一冊です。宮沢賢治の優れた小説がそうであったように、雑木林物語とでも言うのでしょうか、人間の生活するすぐ傍で続く動物の生の営みという視点が、海外の大自然を舞台にした動物文学とは全く違います。

 

「世界動物文学全集」は取りあえず、1巻と4巻のみ持ち帰ってきました。各巻700円です。

 

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