「クマが私のお師匠さんです」と言うアイヌ最後の狩人、姉崎等さんの「クマにあったらどうするか」(ちくま文庫700円)が入荷しました。仕留めたクマは60頭という大ベテランのクマ撃ちの話を映像作家の片山龍峯が記録した本です。アイヌ民族の伝統的なものの考え方に、こんなものがあります。

「アイヌモシッタ ヤクサクベ シネブカ イサム」

日本語にすると「この世に無駄なものは一つもない」ということです。

このクマ撃ちの名人もその考えに立っています。人を襲ってしまったクマは、山に返そうが、必ずまた人を襲う。だから、殺さねばならない。クマ自身が、自分が強いと思ったら駄目なんだ。しかし、「昔から地球上に、お前達生きろと神様から言われて分布して生きているものは、生きていてほしいと思うね。虫一匹だっていなければ人間には困ることだってある。」と語っています。

アイヌ語でクマは「キムンカムイ」と言います。これは「山の神」という意味ですが、「キム」は「里山」に近い場所を指しています。だから、正確には「里山の神様」という意味になり、クマと人間は、そんなに遠い距離ではなく、近くで暮らしていたのです。クマはいつも人間を観察しているし、人が来たら逃げる動物です。それが、いつの間にか、恐ろしい動物のイメージになってしまったのは悲しいことですね。この本では、本当のクマの姿、そしてアイヌ民族とクマとの深い関係など、どれも楽しいお話が収録されています。

エピローグで聞き手の片山さんが、クマに組み伏せられて、今にも食べられそうになった時、どうすべきかという質問に対しての、答えが笑います。

「手を握って、こぶしを作って腕をクマの口の中に突っ込んでベロをつかんで押したり引っ張ったりする。そうやって喉を塞がれると、クマのほうも嫌だから逃げていったというハンターの話はあります」

これって、「口から手突っ込んで、奥歯ガタガタ言わしたろか」っていうあの懐かしのギャグと変わんないですね。

蛇足ながら、星野道夫ファンはお読み下さい。後半に彼の本のことも出てきますから。

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