あるジャンルにカテゴライズされないシンガーに出会うと、いいもん見つけた気分になります。今回、二人の女性シンガーと出会いました。

一人は越美春。70年代後半NHKレッツゴー・ヤングに参加、その後細野晴臣と組んで、テクノポップミュージシャンとして活躍(レコード店勤務時代にテクノカットの女の子によく売りました)したシンガーです。レコード業界を離れてからは、全く関心もありませんでしたが、アルバム「Madame Crooner」に惹かれるものを感じました。

「セシ・ボン」、「モナ・リサ」、「聞かせてよ、愛の言葉」、「シューベルトの子守唄」などの懐かしい歌や、古いドイツ映画「嘆きの天使」、ディズニー映画「白雪姫」の「いつか王子様が」など全13曲です。セピア色満開のアルバムです。へぇ〜、飛び跳ねるような高い声で歌っていた女性が、こんなに粋でオールドファッションに歌うことができるようになったんですね。

タイトル「Madame Crooner」についいて、彼女はこう書いています。

「クルーナーとはマイクロフォンを通して囁くように歌う歌手のこと。(一部略)そのルーツはルネッサンス時代の吟遊詩人や王道の賛美歌歌い、呼び売り商人たちであると言われています。でも、クルーナーは男性歌手のこと。歴代のクルーナーへの敬意を込めて、このクルーナー婦人という視点で作ってみました。」

楽しい宵の一時にピッタリの1枚。(1500円)

 

もう一人は能登半島出身、京都在住のシンガー浦千鶴子で、ファーストアルバム「Try  to Remember」を聴きました。ジャズボーカルアルバムですが、華美に走らないナチュラルな感じが、逆に豊かな世界を聴かせてくれます。以前にも書いたことがありますが、昨今の日本のジャズシンガーは、ボソボソと妙な色気路線か、ゴージャスにスウィングすればいいんでしょみたいなアルバムなかりで、CDショップで試聴する度に、一曲を聴いただけで失望します。上手いんだけれど、何かが欠落している感じ。

でもこのアルバムには、彼女を育んだ風土の香りが充満しています。8曲目「北風」は、もう能登半島の冷たい海風が舞っています。エンディングは、ご存知、日本の名曲「この道」です。自分の生きてきた道を、うん、これで良かったと肯定する軽やかな心持ちに拍手を送りたくなります。データによると、彼女は福祉施設での音楽療法や、病院、保育園での演奏を続けているとか。短いナンバーですが聴かせます。(1600円)

どちらも、豊かな世界を広げてくれる小説に似た音楽です。

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