ミュージシャン、高橋幸宏は釣りが趣味です。(私は全く知りませんでした)

釣りについて「単純でいて実に奥が深い。いろいろな釣りをやるようになって、もう25年以上たつ。」と書いているのでベテランといっていいのでしょう。超多忙だったYMO時代も、休日には一人静かに、釣糸を垂れていたんでしょうか。なんか微笑ましいですね。

その彼が、フライフィッシングを始めて、その面白さにのめり込んでいきます。フライフィッシングは欧米式の毛針であるフライを使用し、フライの選定の仕方、釣りポイントの地形、自然状況等を読み取る力量、等ハードルの高い奥の深い釣りで、彼も敢えて挑戦しませんでした。しかし、初めてみると違いました。

「難しく釣ろう、ではなかった。納得して釣ろう、であった。美しく釣ろうであった」

と、この世界の魅力を一冊の本にしました。それが「キャッチ&リリース」(大栄出版600円)です。しかも、この本、フライフィッシングについてのエッセイではなく、小説なのです。所々に、津留崎健の撮った釣り人の写真を挟みながら、主人公、柚木正和の心の成長を描いていきます。ラスト山女魚を釣り上げ、持って変えるべきか否かで躊躇しますが、結局川に帰します。本のタイトルの通り「釣り上げ」そして「帰す」というところで幕を閉じます。

さて、釣りをテーマにした文芸では、元文藝春秋の編集長だった湯川豊が、優れた作品を残しています。「イワナの夏」は、偶然図書館で手に取って、一気に読んだ記憶があります。静かで豊かな時間の流れるエッセイでした。その湯川の文章も掲載されている「21のヤマメ物語」(朔風社600円)は、21人のヤマメに魅入られた人々の文章が載った本です。傑作なのは、あの天才ピアニスト、グレン・グールドが、実は釣りを憎んでいて、釣り師撲滅運動をしていたという事実です。そういう四方山話含めて、読ませてくれる一冊です。

湯川には、須賀敦子の小説と彼女の人生を描いた「須賀敦子を読む」という素敵な本もありますが、「夜明けの森、夕暮れの谷」(ちくま文庫)の、いわゆる「ネイチャーライティング」にカテゴライズされる一冊をお薦めします(今、店にはありませんが、探します)。もちろん星野道夫へのインタビュー「終りのない旅」(SWITCH1300円)もぜひ、お読みいただきたいところです。

 

 

 

Tagged with: