梨木香歩の最新刊「丹生都比売」(におつひめ)が、早くも入荷いたしました。これは、今までに主に雑誌等に発表された短篇をまとめた一冊です。

08年に発表された「月と潮騒」や、その前年の「本棚にならぶ」を読むと、奇妙なテイストのファンタジーで、おそらく「家守奇譚」の不思議な世界の源流かもしれません。未発表だった、たった数ページの「コート」は、姉の残したコートのことを描いた作品ですが、最後の数行で泣きます。

94年、児童文学雑誌「飛ぶ教室」に発表された「夏の朝」は、「西の魔女が死んだ」へと繋がる少女小説の傑作です。長編アニメ「借りぐらしのアリエッティ」にちょっと近い感覚のある少女と小人のお話です。そして、ストーリーの進行にガンダムのモビールスーツも巧みにアレンジして小道具として駆使しながら、少女の成長を見つめます。ところで、このお話の語り手が実にいいんですが、それは内緒にしておきます。

「ピチンとモビルスーツの最後の薄い膜が弾け散る音がした。いつのまにか春は夏になった。今年一番の燕が、窓の外でくるりと円を描き、いよいよ本当の夏が始まるよ、といっているみたい。

甘い、みずみずしい予感と共に、夏ちゃんは目を覚ました。」

というラストの文章で、いい小説を読んだ後に、本をパタンと閉じた時の喜びに満ちた時間を味わえます。

本のタイトルになっている「丹生都比売」は、95年に出版工房原生林から一度、出版されています。それを今回、改稿したものですが、これ、時代は今から1300年前のお話です。最初のページに登場人物達の相関図が載っていますが、もう漢字ばっかで、読むのを止めようかと思ったことを思いだします。

2013年の「鳥と雲と薬草袋」「冬虫夏草」そして今年発表の「海うそ」と充実した作品を読ませてくれる梨木香歩は、今、旬な作家の一人なのかもしれませんね。

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