「軽くて暖かい着るものが欲しくて、手紡ぎ・手編みを始めました。もともと友禅をしていたので、ナチュラルカラーだけでなく、染めたりもします。一頭分から作る事が多いので、一点物になりますが、永く使っていただけたらと思います。是非、手に取ってください。」

という中束さんの、それはそれは美しい手仕事の展覧会です。

羊から刈られた毛は、糸に紡がれ、ひと針ひと針ごと編み込まれて身を包むものへと変身していきます。

遠い昔から人の手を通して、こうやって着るものが作られてきたのだ、と改めて思う作品展となりました。ここまで手の込んだ物になると、頻繁には作品展はできないと思いますし、事実、中束さんも3年ぶりの個展だそうです。編みものをしたことのある人には、これらのカーディガンや帽子や手袋がどれほど細かい仕事の積み重ねか、きっとわかるのでしょう。初日来られたお客様からも、感嘆の声が聞こえました。本当に大切に、着続けないと勿体ない、申し訳ない、という気になります。前回のフェルト展に続き、手仕事の素晴らしさを改めて感じる展覧会です。

ところで、中束さんのニット展の副題は「わすれもの」となっています。猛スピードで世の中の動きから、置き忘れられた手仕事のことでしょうか。それとも昔忘れた約束を編み込んだのでしょうか。ご本人にお聞きしたら、かつて編み物について教わった方の一つ一つの教えを、わすれてはいないかと検証する気持ちがあったとか。どこまでも真摯な作家の手触りの良さ、目をみはる美しい編み込みに触れてください。(女房)

中束育代 手紡ぎニット展「わすれもの」は11月18日(火)〜30日(日)最終日は18時まで