ブックディレクター幅允孝って、ご存知でしょうか。様々な場所に本を設置することで注目、TV「情熱大陸」でも取り上げられ、また既に3冊の著書も出版されています。最初の私の感想ですが、あ〜、おしゃれな場所に、いかにもという本を並べる人ね、というものでした。

しかし、3冊目の本「本なんて読まなくていいのだけれど、読んでみるのもいい」(晶文社1300円)を読んで、印象ががらりと変わりました。申し訳ありませんでした。幅さん、あんた根性あります!!

ちょっと長いけれど、彼の本に対する思いを書いた文章を引用します。

「僕はよく『洒落た本棚をつくりますよね』なんていわれる。けれど、正直に告白すると、お洒落な本屋などに興味はない。大切なのは、本に無関心な人々を立ち止まらせること。そのための方法として洒落た棚が効果的ならば、どんどんそういったやり方も採用する。けれど、一番伝えたいことは、もっと別のところにある。それは、つまらない本なんていうのは、元来世界に存在しないということ。何年も新しい読み手の到着を待ち続けている。見向きもされないような場所に佇む本であっても対話を交わしてみれば、きっとあなたも気づくはずだ。その本の中に静かに流れる血潮はまだ温かく、それは決して銹びることがないということに。」

そして彼は、自ら言うように「容赦ない場所へ」本を設置する。例えば、認知症患者の治療をする病院に本棚を設置しに佐賀県まで出向く。認知症患者に本が必要なのかと疑問が湧くが、試行錯誤を繰り返しながら棚を作っていく。本が必要な人がくるのを待つのではなく、こちらから出向くなんて、相当の熱意がないと長続きできません。

認知症患者を抱える家族に、本を読む余裕なんてありません。しかし、患者さんの診療時間の間の数十分だけでも、未来を向いてほしい。「介護が終わったあとの日々もちゃんとあるのだ」ということを思いだしてくれそうな本を設置していきます。

「ブックディレクター」というより、「本を手渡す人」の書物への愛着に溢れた一冊です。

 

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