アルゼンチンを代表するボルヘスの小説「砂の本」の一節に

「砂と同じくその本にも はじめもなければ終りもない、というわけです」とあります。

この「砂の本」に深くインスパイアされて、迷宮的世界を版画にして、一連の作品に仕上げられたハセガワアキコさんの「バベルの書室」展が始まりました。

ボルヘスは、その生涯一度も長編小説を書いていません。ほんの数ページの作品も沢山あります。削ぎきった簡潔な文章で、異常な世界を描いてゆく作家です。麻薬的な恐怖みたいな世界へと誘われる、アブナイ作家の一人です。ハセガワさんがモチーフにした「砂の本」は、無限のページを持つ一冊の本が登場します。その世界を元に製作された版画も、不思議な魅力に溢れた作品です。暗黒の空間に浮遊するオブジェ。いかん、この世界にのめり込むと、戻れなくなるかも。でも、ゆっくりと漂っていたいと思わせる作品です。

他にも、11世紀のペルシャの詩人ハイヤームの四行詩を集めた「ルパイヤート」からは「一滴の水だったものは海に注ぐ。一握の塵ちりだったものは土にかえる。この世に来てまた立ち去るお前の姿は一匹の蠅はえ――風とともに来て風とともに去る。」を作品化されています。また、レイチェル・カーソンの名著「沈黙の春」の一節を作品化したものもあります。

「生きている集団、押したり押し戻されたるする力関係、波のうねりのような高まりと引きーこのような世界を私たちは相手にしている」を版画にした作品なんて見たくなってくるでしょう?

神秘的で、幻想的な世界が誘われて、作家の内部に流れる音楽を奏でる魔笛が聴こえてきそうです。小さな本屋の壁に静謐な世界が広がりました。

版画作品と、作家さんが製作されたミニ本も展示販売しています。また、影響を受けた愛読書を装幀した本も展示(非売)しています。

 

 

 

ハセガワアキコ 「バベルの書室」展 

4月28日(火)〜10日(日) 5月4日(月)は定休日

★4月28日、29日、5月2日、3日、10日に在廊予定です。