2013年9月30日、神戸元町にあった「海文堂書店」が閉店しました。

この書店は、私の好きな新刊書店ベスト3に入ります。店の規模としては、まぁ大きいとはいえ、ナショナルチェーンの図体ばかりでかい書店に比較すれば、小振りです。この店の素晴らしさは、何よりも本に対しての愛情が溢れていることです。一人よがりにならず、お客様のちょっと前を見つめて選書してあるので、本棚を見る楽しみに時間を忘れます。

海文堂書店は、実は創業は古く、1914年(大正3年)に初代、賀集喜一郎が開業した「賀集書店」がその始まりです。1926年、屋号を「海文堂」に改め、今日まで営業を続けてきました。神戸っ子だけでなく、全国の本好きに愛された本屋が閉店を迎えるまでを綴ったのが「海の本屋のはなし」です。

この本を出版しているのは。2014年神戸に出来た独立系出版社、苦楽堂です。著者は平野義昌さん。2003年に同書店に入社して、最後の日まで見つめた方です。

「『売る者』と『読む者』がつながり、『読む者』同士がつながりました。『売る者』と時には『読む者』ともつながり、そして『作る者』も『売る者』とつながりました。その場所が『海文堂』でした』

そんな幸せな場所が何故消えていったのか?その事を検証するのがこの本のテーマではありません。この場所に集い、データに頼らずにいい本を集めた仲間たち、そんな彼等を支援してくれたお客様。その楽しく、充実していた時代の記憶を振り返る一冊です。

私は、いい店というのは個々の商品が充実しているのではなく、それらが集まってその店が目指すもの表現している場所だと思います。売場が醸し出す雰囲気とでも言うのでしょうか。「海文堂」に集うお客様も、あ、この雰囲気良いよねと思い、贔屓にされていたんだと思います。

「9月30日をもって閉店」と書かれた紙切れだけで従業員に通告された閉店告知。何故?どうして?今後?も全く伝えられないままの連絡を見た従業員の気持ちは忸怩たるものがあったはずです。

私が最後に担当した新刊書店は300坪の大型書店でした。フツーの大型書店にはしたくなかったのでかなり個性的な棚作りをやり、学生さんを中心に支持をいただきました。わりあい順調に推移していたのですが、数年後、近隣にこの店より大きい店が出来ました。途端に売上げは降下していきました。300坪より、500坪、500坪より1000坪。店の大きさに屈服するのです。その時、思いました。書店員のスキルって何?

「海文堂」の近隣にもやはり大きな書店が出来ました。多分、そのことが閉店の遠因になったのではないでしょうか。物量だけで決まるなんて、バカバカしい、という気持ちが、私が会社を辞める原因にもなりました。