イギリス北部の荒涼たる大地に、北極海からの冷たく激しい風が吹き付ける。その荒々しい自然の前に身を屈める人達。政治的にも、人間的にも卑屈になりそうな時に、遠くから聞こえてくる切ない声。ともすれば、風の中に消えてしまいそうなのに、強靭な精神力で立ちつくす。ダブリン出身のバンドU2のアルバム”The Unforgettable Fire”(800円)にはそんな息づかいがあります。

同じヨーロッパでも、スウェーデンから登場したThe tallest man on earth、直訳すれば「世界で最も背の高い男」という名前のシンガーのアルバム”Dark Bird is Home”(1800円)は、U2のように戦闘的ではありませんが、北の涯から物語を紡いでいます。デビュー当時のボブ・ディラン風と評価されていますが、北欧の澄み切った空や、星降る夜が醸し出す物語が聞こえてきそうです。寒い国に旅される方にはお薦めですね。

同じような強い風でも、テキサスのど真ん中を吹き抜ける風は、不毛です。テンガロンハットにロングブーツ、そして片手にはびんビールという典型的なアメリカの風景の中で、ゴチャゴチャ言わんと仕事せんかい!ほな、いくで〜!! と、言わんばかりのガッツだけで、トウモロコシ畑にはいってゆく男たちの背中が見えるようなのが、サニー・ランドレスの“Bound  by the Blues”(1600円)。個人的には、こういうアメリカ男はご遠慮いただきたいのですが、音楽はいい! いやな仕事が待ち構えている朝、気合い一発ケンカモードに突入できます。

一方こういうマッチョ男からは離れて、トム・ウェイツの”Closing  Time”(950円)は、しがない酒場で安物のバーボン片手にブツブツ与太っている男の、曲がった背中が見えてきそうです。初めてこのアルバムを聴いた時(やはり酒場でしたが)しびれましたね。酔いつぶれる一歩手前で踏みとどまり、まぁ、明日もあるかとムクッと起き上がる格好良さを学ばせてもらいました。

ところで、昨日から始まったARK写真展の中に、「バンジョーファミリー」と名付けられた作品があります。三匹の雑種の犬の写真(左)です。

ホンワカモード全開で、ボビー・チャールズの名作”Bobby Charles”(1300円)に収録されている、和みの名曲「スモールタウントーク」が聞こえてきます。口笛で始まるこの曲には、きっとバンジョーファミリーの面々もホイホイ付いて行くのではないかな。