塗込められた壁から、顔と手指がわずかに出ている白いパネル。死と生の間で、想いを秘めているかのように静かに目を閉じています。

台にズラリと並んでいるのは、白い紙粘土で作られた、手足の長いひょろりとした裸体の人物。皆、仮面をつけています。生きているのか、死者の使いなのか、そして開けた口から吐き出されるのは、悦楽のため息か呪いか・・・妖しい沈黙は、標本のようです。映画「未知との遭遇」のラストに登場する宇宙人のような、ながい手足をだらりと伸ばしたまま浮遊しています。

顔の表情の面白さもさることながら、作品の後ろの壁に、投影された人形の影がまた面白く、かれらの思いを象徴しているようにも見えてきます。

 

作者の中西さんは、開店以来のお客様で、これが初めての個展になります。本についての深い造詣をお持ちの方で、週に一度は、当店の書架を眺めながら、いろんな本の話を聞かせてもらったことは、新米の古本屋にはとても有り難く、店の本の収集に役立たせていただきました。

それが、ある時から、パタッと来られなくなりました。久々に来られた際にお聞きしたところ、紙粘土での創作に励んでおられるというのです。毎週、大阪の古書店回りをされていたのも止めて、創作に専念とか。今回その作品の一部が並びました。

この人形たちが背負っている、業の深さや、哀しみや、ユーモアなどを感じるのは、作家の中に蓄積された膨大な本の森の奥から滲み出てくるものでしょう。

初めて創作された作品を、こうして眺められるのは、ギャラリーをしているものにとって、本当に幸せなことです。

★中西敦浩作品展9月22日(火)〜10月4日(日)最終日は午後6時まで