アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品が、これまで国内で上映されることは少なかったのですが、ドキュメンタリーへの注目度が上がり、観ることができる環境が整ってきました。

超高層ビルにワイヤーを掛けて、安全ロープなしで渡る男を描いた「マン・オン・ワイヤー」(08年)、地球の裏側で、一躍ヒーローになった歌手の数奇な運命を描く「シュガーマン奇跡に愛された男」(12年)、そして、様々な歌手のバックコーラスを勤める女性たちの生き様を描いた「バックコーラスの歌姫たち」(13年)など、どれも傑作です。(年始年末の下らない番組にヘキヘキされている方に、ぜひレンタルをオススメします)

そして、今年の受賞作品「ヴィヴイアン・マイヤーを探して」も、驚かされる作品でした。

ある時、一人の青年がオークションで未現像のフィルムの詰まった箱をゲットします。古いアメリカ市民達の、様々な表情を捉えた作品に魅入られた青年は、作品をネットで公開し始めます。それが凄まじい反響を呼び、あれよあれよという間に、世界各国で個展が開かれ、大盛況となります。(是非、日本でもして下さい)

撮影者の名はヴィヴィアン・マイヤー。すでに故人で、職業は元ナニー(乳母)でした。なんと15万枚以上の作品を残しながら、生前に一度も公表することはありませんでした。。
ナニーをする傍らで、なぜこれほど優れた写真が撮れたのか?なぜ誰にも作品を見せなかったのか?その疑問に取り憑かれた青年、本作の映画監督ジョン・マルーフは、彼女の生きた証しを求めて、国内だけでなく、フランスにまで足を延ばします。
生前の彼女を知っていた人達の口からは、「変人」「人付き合いを極端に避けていた」「部屋中に新聞を溜め込んでいた」等々と、ネガティブな印象を多く聴かされます
その一方、プロの写真家たちは、その技量、世界観を褒め称えます。良く出来た人間が、素晴らしい作品を作るとは限らないのですが、マイヤーの場合は極端でした。果たして、彼女は何のために写真を撮り続けていたのか、謎は深まります。
映画は、マイヤーの作品の魅力を追いかけるとともに、実は追いかけている監督自身の情熱を見せています。彼女が残したメモや、手紙、レシートの端切れまで丁寧に整理していく姿が映し出されますが、こういう熱意があって初めて、彼女の作品が世に出たのだと思います。好きなことに一心不乱に身を捧げると、こんな奇跡のような事もおきるんだ、ということをし示したドキュメントです。