「お前の訳文が曲がっているのは、生き方が曲がってるからだ。」

こんなこと言われたら、落ち込みますよね。言われたのは、翻訳家の都甲幸治。これ、「都甲幸治対談集 読んで、訳して、語り合う」(立東舎1300円)の中の「翻訳家ができるまで」というテーマの対談の一部です。

対談相手は、今人気の岸本佐知子で、彼女も翻訳学校時代で、もう徹底的にしごかれて、学校の帰り道、「駅に向かいながらひっくひっく泣きました。」と告白しています。

因みに、冒頭の言葉を言い放ったのは、彼を教える立場にいた、柴田元幸。

岸本以外に、いしいしんじ、堀江敏幸、内田樹、柴田元幸、藤井光等とのユニークな対談を集めてあります。海外文学が専門の方々が多いのですが、村上春樹の「1Q84」をテーマにした都甲幸治×内田樹×沼野充義の対談は、そんなに村上フリークではない私でも、引きずりこまれました。

「僕は村上さんにはたぶん男性をどう『武装解除』するかということがひとつのテーマとしてあるような気がするんですよ。」と切り出した内田は、

「今の世界は、男性中心主義が解体されて、フェミニンな共産主義みたいなもののほうへ、ゆっくりと向かってるような気がするんですね。そのなかで『村上春樹的父親』はあらゆる家父長制が解体されたあとに最後に残りそうな、もっともしぶとい父性だと思うんです。それをどうやって武装解除するかということが村上さん自身のパーソナルなテーマ」と、結論づけています。

さて、爆笑ものの対談は、京都在住の小説家いしいしんじとの対談です。この中で、日本では海外文学を読んでると、おしゃれ!と言われがちですが、いしいさんは海外文学は「ぐちゃぐちゃで臭くて、下品で、ひどい話ばっかりですね。でも、ぐちゃぐちゃであるほど面白いんで。」と言っています。「ぐちゃぐちゃであるほど面白い」のは日本文学も一緒ですね。