小説では表せない世界を、コミックという表現手段を駆使すれば、とても面白い世界が展開することがあります。最近、何冊かそんな本に出会いました。

「辺境で」(角川400円)というタイトルに魅かれて手に取ったのが、伊図透の作品集です。壮大な物語がこれから展開しそうな最新作『銃座のウルナ』(1巻発売中)で話題の作家の、初期から最近作まで集めた作品集です。クールなタッチで描かれる「辺境で」は、冷たい風が吹き荒れる北の大地で繰り広げられるサスペンス。ハードボイルドタッチで物語は進みますが、人物造形が見事です。

次に紹介するのは、ガラリと世界が変わり、秋山亜由子の「こんちゅう家業」(青林工藝舎800円)。なんとも不思議な世界が展開する、一種のファンタジーです。タイトル通り、こんちゅう達が主人公なのですが、人間のごとき姿の虫?も登場して、奇妙な世界が展開していきます。グロテスクなようで、哀れで、そして切ない感情が入り乱れます。黄泉時を巡って展開する「十三夜」、花の精が登場する「つくも神」はお薦め。表紙に「あんじょういきますように…..」と京都弁で書かれていますが、まさに「あんじょういかはる」世界です。因みにこの京都弁「(過不足なく、ほどほどに)上手く行きますように」というニュアンスです。

 

さて、もう一冊。Panpanya「蟹に誘われて」(白泉社700円)です。これ、文章で説明するのが難しい。「いずれが幻なのか この世か。あの世か」と帯に書かれていますが、その通りの世界です。とは言え、妖怪やら魑魅魍魎が闊歩するものではありません。脱力系キャラの女の子の日常を散文的に描いてあるのですが、どうにも説明できないシュールな世界なのです。ちょい、つげ義春風に書き込まれた背景に佇むかわいい女の子。ユルキャラっぽい山椒魚に、イルカまで登場して、物語があるような、ないような展開が続きます。なんだこれ、とは思いながら、不思議とこの世界が心地良いのです。やはり、幻なのか、あの世なのか…..。多分、描き込まれた背景がリアルなこの世で、女の子たちはあの世の住人。その接点をフラフラ漂いながら、読みました。

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