細野晴臣選曲、監修によるCD「ETHNIC  SOUND  SELECTIONS」。それぞれに、「既視」「祖先」「律動」「恋歌」「哀歌」というタイトルが付いていて、そのタイトルに因んだ曲が、全世界から集められました。ブルガリア、イラク、トルコ、韓国、中国、パキスタン、タンザニア等々あらゆる国の曲が収録されています。さすが、細野晴臣です。

このCDの正しい(?)聴き方は、真面目にじっと聴かないことです。遠くの方から、ふわっと聴き取れるぐらいの感じで流してください。そうすると、それぞれの国の巷で流れている音楽が、周りの雑踏とほぼ良くミックスされて、自分が異国の中にポツンと立っている気分になれます。例えば、「恋歌」に収録されているビルマの「ザディアナー・サチャー・ウェイラー」などは、夏の暑い日に部屋の向こうから、かすかに聞えてくると、素敵な午睡が楽しめます。音楽なんて、あんまり聴かないなぁ〜という方にもお薦め。価格はワンコインランチより安い、1枚400円! 400円で世界一周です。

日常の暮しを見つめる優れた小品を書いている石田千が、日本各地を周り、その土地の唄と、そこに暮らす人々を紹介する「唄めぐり」(新潮社1400円)が入荷しました。この作家の「月と菓子パン」(晶文社650円)「屋上がえり」(筑摩書房700円)を読んで、ケレンのない、地味ながら優しい文章のファンになったのですが、「唄めぐり」の方は、エッセイというよりノンフィクションと言った方がいいかもしれません。

秋田県「秋田米とぎ唄」、香川県「こんぴら船」に始まり、福島県「あまちゃん音頭、新相生馬盆唄」まで全25曲。日本中を駆け巡ります。どの章も、歌詞が収められ、唄の生い立ちを調べ、唄を現地で聞いて、その土地で生きる人々とどう関わってきたのかが、著者らしい素敵な文章で綴られています。例えば、宮城県「大漁唄い込み」では、活気を取り戻した石巻港のせりの様子をこう締めくくっています

「声をはりあげていた競る港の人は、みな懐中に鼓舞する拳を握っている。目の前に、いのちをかけて働いてきた海がある。あおく冴える波にむかって、船がまた出ていった。まえは海、まえは海。大漁網を、唄で引っぱる。」その風景がすうっと現れてきます。

また「唄っこきいて、石っこながめて、雪っこでころんで、はっと汁の味っこ覚えて、うれしかった。そうして、お参りも無事すませた。あとは、お湯っこで、酒っこ」なんていう岩手県「げいび追分」の最後の文章に出会うと、なんだかこちらも、ぴょんぴょん飛びはねて、どぶんとお湯につかり、美味しいお酒にのどをならしているような気分になりました。