書評家の岡崎武志さんの新刊「気がついたらいつも本ばかり読んでいた」(原書房)を読んでいたら、こんな記述にぶつかりました。

「蓮實重彦を代表とする映画の高踏的ファンのあいだで、フランシス・レイが好き、というのは、文学好きのあいだで、相田みつおが好き、というぐらい勇気がいる。しかし、好きという気持ちはどうしようもない。」

岡崎さんは、映画「男と女」のサントラを担当したフランシス・レイのことを賞賛しているのですが、ロマンティシズムとリリシズム一杯の、あの音楽を誉めるのは、気が引けるのかもしれません。私は大好きです、このサントラは。

これほど冬にピッタリの音楽はないと思います。もしかしたら夏にかけたら、うざい!と再生を止めてしまうかもしれません。ところが晩秋から冬にかけて聴くと、これほど季節に寄り添った音楽は、ないでしょうね。映画界に革命をもたらした「男と女」は、その後多くのTVコマーシャルでパクられる程有名でしたが、映画を知らなくても、雪の降った日にエンドレスで流しておけば、見慣れた街の風景が全く違ってみえてくるかも。

映画音楽というのは、もちろん映画に属しているのですが、「男と女」は完全に独立した力の持った音楽でありながら、映画の世界を深く語るだけのサウンドを持つ希有なアルバムです。店にはレコード2000円、CD1400円を置いています。どちらも、オリジナルの映画ポスターをジャケットに使用しています。

このサントラで歌っている歌手であり、出演者でもあったピエール・バルーが昨年82歳で亡くなりました。歌手であり、俳優であり、レコードレーベル「サラヴァ」の創設者であるという、多面的な活動をしていました。彼のデヴュー作品、フランシスとコラボしたアルバム「VIVRE」(1800円)も、これまた冬に聴くべき音楽だと思っています。梅雨時分に聴くと、ドロドロと心が溶けてしまいそうなので御注意ください。

モノクロームな光景とアンニュイな雰囲気、そして孤独感。フランシスのアコーディオンがそっと寄り添うところがニクイですね。ピエールはこんな風に冬を歌っています

「冬のある日、光を浴びて君が目覚めた とまどう冬 冬の太陽 君が見つめている僕だけの心が目覚めた 鳥は僕の夏に向かって鳴いた」

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