梨木香歩作品集「西の魔女が死んだ」(新潮社1200円)を読みました。

傑作「西の魔女」に登場するおばあちゃん、ヒロインのまいちゃん、そして愛犬ブラッキーが登場する「ブラッキーの話」、「冬の午後」、「かまどに小枝を」を一緒にした「西の魔女が死んだ」をめぐる作品集です。

作者あとがきは、これ程美しいあとがきはない、と思いました。

「ただシンプルに素朴に、真摯に生きる、というだけのことが、かつてこれほど難しかった時代だあっただろうか。社会は群れとして固まる傾向が強くなり、声の大きなリーダーを求め、個人として考える真摯さは揶揄され、ときに危険視されて、異質な存在を排除しようとする動きがますます高まってきた。」

まいのおばあちゃんと同世代になった作者は、こんな時代だからこそ、まいの物語を読んで、その人に寄り添う一冊であって欲しいという思いから、再度「西の魔女が死んだ」を送り出すことにしたのです。そして

「老若男女問わず、この本を必要としてくれる人びとに辿り着き、人びとに寄り添い、力の及ぶ限り支え、励ましておいで。私たちは、大きな声を持たずとも、小さな声で語り合い、伝えていくことができる。そのことを、ささやいておいで。」

と結んでいます。自分の書いたものが、読者の人生の、小さいかもしれないが、手助けになって欲しいという思いが伝わってきます。

「かまどに小枝を」は、「西の魔女」の中で、自分で生きてゆくことを学んだまいちゃんが、おばあちゃんの家を去った後の日々が描かれています。ある日、彼女は虹を見に丘に向かいます。そして小さな虹に向かって祈りを捧げます。

「この空の下で、私の娘も、その娘も、今、生きている。新しい環境の中で、新しい道を選ぶこと、さらにその道を進むということは、体力と気力がバランスをとっていなければ、なかなか簡単にいくものではない。今はまだアンバランスだとわかっていても、他にどうしようもなく、進まなければならないときがある。時の流れは容赦ない。」

でも祈ろう。それは、著者が、色んな人生を選択した人たちの、明日が良い日でありますようにという祈りなのです。

 

★勝手ながら、5/8(月)、9(火)連休いたします。