京都シネマで朝、一回上映の名画リレー(京都シネマ会員は500円!)作品「アイ・イン・ザ・スカイ世界一安全な戦場」を観てきました。ポリティカルサスペンスの傑作で、一秒も画面から目を離せない映画です。現代の戦争の一断面を、サスペンスいっぱいに描いただけの映画かというと、そうではないところが妙味です。

舞台は現代のナイロビ。その上空6000mを飛ぶ無人偵察機ドローンの「空からの目」が、テロリストの動向を探っています。凶悪なテロリストたちが、大規模な自爆テロを実行しようとしていることをつきとめ、その隠れ家をドローン搭載のミサイルを使用して爆撃しようと英国、アメリカの軍人たちは動きます。ところが、そのテロリストのアジト前で、近くに住む少女がパンを売っている。この少女を犠牲にして、爆撃を敢行するのか否かを巡り、軍部と政治家の熾烈な駆け引きが始まります。

即時爆撃を主張するイギリス軍のキャサリン大佐と、少女を巻き込むことに逡巡して、英米政治家が、法的責任を巡ってタライ回しを始めます。この辺りのやり取りを、映画は極めて冷静に描いていきます。大義なき戦争を始めておいて、少女1人の命の重さも今更ないだろうと思うのですが、その矛盾を抱えたまま映画はどんどん進みます。

この軍人も政治家も、戦場から遠く離れた場所で、ドローンから映し出される映像だけを見て判断しています。「世界一安全な戦場」というサブタイトルそのままです。私たち観客も、この映像を凝視しながら、無意味な戦争への参加を余儀なくされます。

椅子に坐って、空調の完備された空間にいる軍人、政治家たちの中で、実際にドローン搭載ミサイルの引き金を引くアメリカの軍人が悲惨です。目の前に広がる惨劇を目にした彼が、おそらく精神に変調をきたし、普通の人生から逸脱してゆくことを予感させる様な表情でスクリーンから消えていきます。もちろん、この少女にも未来はありません。

殺戮の実感を伴わない現代の戦争の、ゾッとする姿を垣間みたような作品でした。