個人的に、ゾンビもの、吸血鬼もの、そして半魚人もの映画は、大好物です。昨今、吸血鬼や半魚人は、絶滅危惧種でスクリーンでお目にかかることは滅多にありません。しかし、ゾンビものは手を変え品を変えて登場して、ファンを喜ばせてくれます。

先日、韓国映画「新感染ファイナル・エキスプレス」を観に行きました。傑作です。監督ヨン・サンホという人は、スピルバーグの「JAWS」、あるいは黒澤明「天国と地獄」辺りの映画文法を熱心に研究していたんではないかな、と思いました。

映画は、バイオ企業が垂れ流した薬に感染した人間がゾンビ化し、その一人が超特急に乗り込んで、一気にゾンビが増加。列車内が大パニックに陥るという(もちろん)荒唐無稽なお話ですが、監督が映画の技術を自分のもににしているので、バカバカしいなんて全く思うことなしに、一気にラストまで見せてくれます。ゾンビが登場するまでの伏線も巧みで、例えば主人公が勤務する投資会社が、問題のバイオ企業に絡んで来るというオチなんて、上手いですね。

主人公と娘が列車に乗り込み、娘が何気なくホームを見ていると、ホームにいた人物が襲われるます。えっ!と思った途端に、列車は発車。その間、僅か数十秒のカットですが、映画とはこれだ!と思う瞬間です。列車内で孤立した乗客達が、次々とゾンビ化していきます。あ、この人は襲われるな、きっとこいつは好きな女を守って死んでゆくな、こいつは他人を押しのけても生き残ろうとするな、と思った通りに進んでいくのですが、途中でその定石の展開がガタガタと崩れていきます。

え?え?え〜!この人もゾンビに?! まさか、まさか、この人までも!そんなぁ〜、という悲痛な思いのまま進行。非情な演出が冴え渡ります。さぁ、ここで泣いてくださいと言わんばかりのケレン味たっぷりの演出に、まんまとはまって泣いている人もいましたね。ハリウッド映画だったら、絶対こんな展開にはなりません。

ディーゼル機関車に飛び乗ってやっと脱出した主人公たちにむかって何十人ものゾンビが走ってきます。機関車に乗り込もうとして引きづられてゆくシーンを俯瞰で撮るという、とんでもない映像美学まで楽しませるヨン・サンホという映画人は、第一線級の実力者です。

ラスト、主人公の娘が歌う「アロハ・オエ」に、私も(まんまとはまり)思わず泣いてしまいました。

 

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