書評家の岡崎武志さんの新刊が出れば、ついつい買ってしまうのですが、今回の「人生散歩術」(芸術新聞社1300円)は、彼のベストの本ではないかと、私は思っています。

サブタイトルに「こんなガンバラナイ生き方もある」とあり、そんな人生を実践したと著者が確信した人物たちについて書かれています。選ばれたのは、井伏鱒二、吉田健一、木山捷平、田村隆一、佐野洋子らの作家、フォークシンガーの高田渡、そして落語家の古今亭志ん生です。

井伏は「自分なくしの旅」、高田は「気骨の人生風来坊」、吉田は「上機嫌に生きる、ただそれだけを」、木山は「危機脱出術」、田村は「恋と友とウィスキー」、志ん生は「「貧乏を手なずけた男」というふうにそれぞれタイトルが付けてあり、興味のある人物から読めるようになっています。取り上げられた人達の人生を見つめることで、そうなんだ、そうやって生きればいいんだということを知る本であり、著者も「私にとっては人生の『実用書』なのである。」と言っています。

例えば、古今亭志ん生の川柳を引合に出して、こんな風に書きます。

「人間は何もしないでいても、本来滑稽な存在である。滑稽と思われることを恥辱と思う人間は、それに抗い、精一杯、虚勢と見栄を張る。しかし、そのこと自体が、また滑稽であることを、志ん生は早くから見抜いていた。そして、自分の稼業である落語に存分に生かした。

我々は、何もくよくよと思い悩むことはない。なぜなら、志ん生の落語があるからだ。」

書評家が書いた「処世術」の本としてぜひお読みいただきたい一冊です。

本好きの人達が集まって作られている「本と本屋とわたしの話」の最新13号が届きました。当店の一箱古本市に毎回出店していただいている「古書柳」の中原さんが古書善行堂の思い出話を書かれています。また、いつも愛読している冊子「入谷コピー文庫」の堀内さんが「氷点」にまつわる話をと、本好きの人達の、マニアっぽくならない、小ネタ満載です。(250円)

 

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