11月11日のブログ、「ちょっと面白いかも?」でご紹介した本が好評だったので、調子にのって第2弾です。
風や水で動く野外の立体作品で有名な彫刻家、新宮晋が絵本を描いていました。タイトルは「くもSPIDER」(900円)。「ある夏の夕方」でという言葉で始まり、夜の間、一匹の蜘蛛が巣を張ってゆく様を美しい点描で描いた絵本。巣の張り方は、本物そっくりなのですが、星が背景に描き込んであるので、まるで宇宙に浮かんでいるみたいで夢のような美しさです。風で動く作品の作家だけに、今にも巣がふわりと動きそうです。
次に紹介するは、河野多恵子の「半所有者」(700円)です。確か、ブログでも紹介した池澤夏樹個人編集の「日本文学全集」」の「近現代作家3」に収録されていて、そちらで読みました。ぞっとする物語ですが、面白いです。そして本の装幀が素敵です。アンカット版(ペーパーナイフで各ページを切り取るスタイル)ではないのですが、それ風のスタイルで各ページの端に、表紙に描かれている蝶がデザイン化されて描かれているという凝ったものです。中野慎治の挿画も美しい。
「色ざんげ」や「おはん」などを書いた宇野千代の「私の文学回想記」(500円)は、今なら女性誌に乗りそうな彼女の恋愛話満載で、ふふふ、と読んでしまいました。「私と東郷青児との結婚生活くらい、矛盾に満ち、また摩訶不思議なものはなかったと思ひます」で始まる結婚生活記録は、文学者らしく、品位を落とすことなく描いています。「東郷との無茶苦茶な生活も、面白かった、と言はない訳には行きません。昼間は呼吸も出来ないほど借金取りに責め立てられても、夜はその苦痛の痕跡もなく、レコードをかけて客と踊ったりしました。」なんて生活、一般人には想像できません。
現在放映中のNHKの朝ドラ「わろてんか」は、大阪のお笑いを描いていて面白く見ています。笹野高史が気楽亭文鳥役で「時うどん」を演じていましたが、さすがでした。せっかくだから、大阪の芸能のお勉強でもという”奇特”な方に、香川登枝緒の「私説おおさか芸能史」(800円)はお薦めです。香川は「スチャラカ社員」「てなもんや三度笠」等の大ヒットTVドラマの脚本家でした。TV創成期から、この業界で活躍していた人物だけあって、興味のあるエピソード満載の一冊です。漫才、落語に留まらず、歌舞伎、文楽、松竹新喜劇まで上方芸能の話が、ソフトな語り口で書かれています。ちなみに、「わろてんか」でヒロインが演じる女性は、吉本興行を創業から引っ張っぱってきた吉本せいがモデルです。もちろん、この本でも取り上げてあります。