今年発売された、全500ページの大長編小説、川上弘美の「森へ行きましょう」(古書1300円)は、とてつもなく面白い小説でした。

1966年ひのえうまの同じ日に生まれた留津とルツ。二人がこの世に生まれた日から、60歳になるまでを描いています。留津0歳、ルツ0歳という風に交互に、二人の女の子が、少女から大人へと成長し、老年期になるまでの人生。読者は、ある時は俯瞰で、ある時は彼女たちに寄り添いながら、見つめていきます。

彼女たちの前には、進学、就職、結婚、妊娠と多くの岐路が現れ、その都度、選択して後悔して、の繰り返し。人生の分岐点で、彼女たちの選んだ道は、もちろんこの二人だけに限ったことではなく、すべての女性に関わる道です。

男の立場からは、こんな描写は理解を飛び越えていると思う場面に遭遇しました。

「体が子どもを生みたがっているような気がしたのよね」

40才を過ぎ、不倫関係を続けていたルツが、突然に持つ感情です。

「どこから湧いてくるのか、まったくわからない。激しい欲望だった。田中涼と体をあわせる時と同じくらい熱いものが、ルツの体の中をかけめぐっていた。『なに、これ』ルツは仰天した。」

ここだけではなく、多くの場面で、恐ろしい程の女性の生きる強さに驚愕しますが、女性の立場から見れば、えっ?そんなん当たり前じゃん、とフツーに反応されそうです。元々、本小説は、日経新聞夕刊連載を単行本にしたものです。世のおっちゃん御用達の日経に連載されていた当時、多くの男性読者は、どんな風にこの二人の人生を見つめていたんでしょうか。そっちも興味あります。

それ程までに、圧倒的な描写と構成で迫ってくるのですが、最後の方、正確には477ページの「2017年 留津五十歳」の展開には、えっ???????????私の小さな脳みそは大混乱。読み違えたのかと、何度も読み直しました。とんでもないどんでん返しが準備されているような、そうでないようなエンディングです。二人が不幸せであるわけではありません。このラスト、社長室で、新聞を読んでいた社長など、おそらくお茶をこぼしたでしょうね。

私はこのラストが不愉快でも、面白くないとも思いません、ただ、混乱し、理解できないのです。なので、今年のベスト1は、今読んでいる松家仁之「光の犬」(新潮社)に譲りました。書評家の岡崎武志さんはブログで、この作品を高く評価されていましたが、あの結末をどう理解されたのか聞いてみたいです。