毎回、斬新な切り口で海外文学を、その訳者が紹介するフリーペーパー「BOOKMARK」最新号が入荷しました。今回の特集は「音楽と本」です。音楽が深く関わる作品が17点セレクトされています。音楽は、クラシック、ジャズ、ロック、ポップス等様々ですが、その個性的なチョイスに読書心がそそられます。

巻頭を飾るのは村上春樹。自分が翻訳に携わったジェフ・ダイヤーの「バット・ビューティフル」について書いています。この本は、ジャズの巨人たちの歴史をドキュメントしながら、そこに著者が作り出した物語を絡めてゆくという斬新な短篇集です。この手法を春樹は大いに参考になったと書き、「行間から音楽が溢れてくるような本です」と締めくくっています。

カズオ・イシグロの唯一の短篇集「夜想曲集」も取り上げられています。紹介した土屋雅雄が「副題の『音楽と夕暮れをめぐる五つの物語』とあるように音楽と夕暮がテーマだが、味わいはなかなかシュールである」と述べています。個人的に唯一読んだイシグロ作品ですが、どこへ連れてゆかれるのかわからない雰囲気が面白い作品集です。

スティーブン・キングがロック好きとは知りませんでした。「いかしたバンドのいる街で」という作品が取り上げられています。豪華絢爛たるメンバーが総出演するロックフェスが永遠に続く街「ロックンロールヘブン」を、ホラー作家らしい手法で描いています。

私も読んで、これはお薦めしたいと思ったのが、T・E・カーハートの「パリ左岸のピアノ工房」です。人気のない裏通りにあるピアノ修理屋。なんか、入りにくそうな雰囲気なのですが、思いきってそこに飛び込んだ主人公の前に登場するのは、ピアノを生き物のように扱う職人と、この楽器に深い愛情を持つ人達です。メインストーリーと平行して、ピアノにまつわる歴史なども語られていき、理解が深まる一冊です。

大概のジャンルの音楽は聴くのですが、苦手なのがブルーグラスです。アメリカの伝的音楽なのですが、退屈、単調、一曲でもう結構、という感じです。S・M・ハリス「ブラックリバー」は、ブルーグラスで使われる、フィドルという楽器を小道具にした本です。刑務官として刑務所で働きながら、バンドを組んで収穫祭のステージに立つ、フィドル奏者の物語。「過酷な人生に真摯に向き合う男の物語には、凛として美しく、どこか物悲しいフィドルの音色が似合う」とは、この本を紹介した高山祥子さんの言葉。こう書かれてると読んでみたくなりますね。

という具合に、どの本も面白そうですが、フリーペーペーパーなので早いもの勝ち。今回はなんせ村上春樹が原稿書いてますから…….。