マウゴシュカ・シュモフスカ監督によるポーランドの映画「君はひとりじゃない」は、第65回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で上映され、銀熊賞を獲得。グディニャ映画祭で金獅子賞、第29回ヨーロッパ映画祭で観客賞を獲得しています。

妻に先立たれた中年男。残されたのは、意思疎通のできていない一人娘。母の亡き後、精神のバランスを崩し、父とはほぼ断絶状態になっています。そんな彼女に寄り添う、セラピストの女性には、実は霊を呼び寄せる力が備わっています。

と、ここまで書けば、そのセラピストが母の霊を呼び、それを機に、父と娘との歪な関係に終わりがくるという結末を予想されますよね。いや、私も半分そう思っていました。映画はそんな風に進んでゆくのですから……

メタボ体型である検察官の父(古谷一行に似てる)は、仕事や食事を機械的にこなすだけの味気ない日々を繰り返しています。ウォッカしかない冷蔵庫がその象徴です。一方、娘は摂食障害を患って痩せこけています。生きる喜びも実感も欠落した日常描写の一方で、心霊描写を随所に絡ませていきます。家族の絆が切れて、ひとりぼっちで生きてゆく二人の姿を見ているのは辛いものです。

にしても、亡くなった母の霊を呼ぶことだけで、この二人の絆が戻るなんてことあるの?と思いながらドラマを見守りました。ラスト、このセラピストが自宅にやって来て、三人が手をつないで母の霊を呼び寄せる儀式が始まります。やっぱ、そういう映画なのだ、と思った瞬間、こ、こんなラストありか?!こんなに滑稽で人間臭い結末ありか!!と仰天しました。

そうだよな、人間には体温があるんだ、だから暖かいんだ、という当たり前の事がこれ程感動するなんて!!古谷一行、じゃない、この中年男のくしゃくしゃ顔に、父ちゃん良かったな、あんまりウォッカばっかり飲んだらあかんで、と声をかけたくなりました。

この女性監督、やるなぁ〜。暖かい涙で一杯でした。