今週は映画館で、二本の映画を観ました。一本目が、昨日このブログに書いた「万引き家族」、そして今日ご紹介するのは「焼肉ドラゴン」です。どちらも、家族の姿を通して時代を描いた素晴らしい映画でした。

「焼肉ドラゴン」の舞台は、昭和40年代の大阪。伊丹飛行場の傍に在日朝鮮の人々が住んでいます。そこにある焼肉店「焼肉ドラゴン」の家族が主役です。高度経済成長に浮かれている時代の片隅へと映画は誘います。

この店は亭主・龍吉と妻・英順がやりくりしています。二人には静花、梨花、美花の三姉妹と一人息子・時生がいます。場末の焼肉店には、騒がしい客が出入りしていて、次女の梨花が、飲んべえの哲男と婚約するところから物語は始まります。

TV「寺内貫太郎一家」なみに、騒がしく、喧嘩も、笑いも絶えない店ですが、戦争に無理矢理徴兵され、故郷を追われ、その上に左腕をなくした龍吉、小さい時にある事件で足に傷を負った静花、学校で虐められている時生、梨花と静花の葛藤、美花の恋愛などそれぞれに抱えている問題が明らかになって来ます。さらに、この地域は不法占拠だと国から立ち退きが迫られます。在日朝鮮人の置かれた辛い現実がしっかり描かれています。

そんな中でも、龍吉は“たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる”と、いつもの口癖で空を見上げます。本音をとことんぶつけ合う家族。我が儘で、情けなくて、哀しくて、優しい、マァうるさい毎日です。でも、みんな一生懸命です。飛び交う言葉のひとつ、ひとつに生きる力が漲っています。

昭和45年。大阪万博が開かれました。夢と希望の未来を祝福するかのように開催された万博。月の石みたさに何時間もアメリカ館に並んだことを思い出しますが、この家族達も出掛けていきます。しかし、その一方で、一家離散の始まりの時でもありました。彼らは悩みながら自分に正直に、それぞれの道を探し出して別れていきます。もう、永遠に会えないかもわからない。でも、龍吉はいつもの口癖を言いながら、妻を大八車に乗せて、長年親しんできたこの地を去ってゆきます。龍吉を演じたキム・サンホ、妻を演じたイ・ジュウンの大きさ、優しさを見ているだけで、この映画は価値があります。もう、人生、どんとこいですよ。

作家の小川洋子は「互いの痛みを互いの痛みで癒し合うしかない家族。彼らがいとおしい。ひたすらに生きている、というただそれだけの理由で。」とこの映画について書いています。「ひたすら生きている」という言葉が胸にせまる傑作です。

関西人でもないのに、大阪弁で罵り合っていた大泉洋、真木よう子、井上真央、桜庭ななみ等、役者が揃い、泣きながらとても楽しませてもらいました。

★レティシア書房「夏の一箱古本市」は、8月8日(水)〜19日(日)

店内にて開催(月曜定休日)

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