1973年、全世界で9000万人の目をくぎ付けにしたテニスの試合がありました。(日本でもダイジェスト放送があったみたいです)女子テニスの世界チャンピオンのビリー・ジーン・キングと、元男子チャンピオンのボビー・リッグスが対戦する試合です。なんで女子と男子が試合を?

70年代、あらゆる場面での男女平等を求める運動が全米で起こっていました。プロテニスの世界でも女子の優勝賞金が男子の1/8でした。不平等に抗議して、ビリー・ジーンは、仲間と共に“女子テニス協会”を立ち上げ、自分たちでスポンサーを探し出して、女子テニス界の待遇改善を図ろうとします。

一方、いかにも紳士然した業界の大御所たちは、あくまで男性優位を譲りません。そんな対決の姿勢に金儲けを企んだのが、元世界チャンピオンのボビー・リッグスでした。俗物のボビーの挑戦にビリー・ジーンは、当初は無視するのですが、一方的な男性優位主義を押し付けてくる男たちに、もうそういう時代ではないのだということを知らしめるためにも、彼女はこの挑戦を受けます。

彼女には、優しい夫がいましたが、実はレズビアンでした。当時は、今では考えられないほど同性愛に対するバッシングが凄まじかったのです。この試合は、単に男女の力の差をみせるゲームを超えて、政治や社会、学校や家庭における女と男の関係までも変えてゆく様相を呈していきます。そのプロセスを描いたのが「バトル・オブ・セクシーズ」です。

ビリー・ジーン役には、大ヒット作『ラ・ラ・ランド』で見事オスカーに輝いたエマ・ストーン。実際のビリー・ジーン・キングのように、前をしっかり見据えた優しく強い女性を好演しています。ボビー・リッグスには、『フォックスキャッチャー』でオスカーにノミネートされたスティーブ・カレル。俗物度満点の“全女性の敵”を、いやらしく、時には哀愁を漂わせて可愛く、たっぷり演じきります。

心に残ったのは、ビリーの試合のユニフォームをデザインするテッドという男性です。彼もまた同性愛者で、おそらく仕事の場面などでも、差別や迫害を受けているはずです。そんなことは少しも顔に出さず、彼女を見守り、ラスト、世紀の試合を終えた彼女を祝福し、これからは自分らしく正直に生きることができる時代が、きっとやってくるよと微笑みます。男も女もありのままに生きてゆくことができる未来が来ることを、暗示させるエンディングでした。演じたのはアラン・カミング。ゲイカップルが、育児放棄された少年を育てる「チョコレートドーナッツ」で、ゲイのミュージシャンを演じていました。優しさと深い人間性が、ひとつひとつの表情に滲み出ていて、素敵でした。

 

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