2004年、スマトラ沖で発生した大津波は、インド、タイ等の沿岸諸国に大惨事を招きました。それから5年。インドを本拠地とするタラブックスは、”TUNAMI”という絵本を出版しました。

インドには家から家へと渡り歩き、絵物語を見せながら、語り聴かせる語り部ボトゥアと呼ばれる人がいるのだそうです。二人のボトゥア、ジョイデブ&モエナ・チットコルは、津波による惨状を絵物語にして、亡くなった多くのひとたちを鎮魂しようと、絵を描き語り歩きました。そして2009年、この絵物語をタラブックスが、本として世に送り出しました。職人たちの手作業で、手漉きの紙に、一枚ずつプリントされた手製本は、被災した多くの人に手渡されました。

2011年、日本の沿岸が津波に襲われました。インドで起こったことと同じことが日本で起きたことから、日本語版の制作が始まり、今年三輪舎より「つなみ」(3780円/限定1500部)が発売されました。

蛇腹式の本を開けると、「さぁさぁ、みなさん聞いてくれ わたしの話を聞いとくれ これからうたう悲しいうたを すべてをさらった波のこと つなみ 命をのみ込む波の話を」という言葉と共に物語りは始まります。ジョイデブの描くダイナミックなデザインと原色に満ちた絵に、先ず目が奪われます。この物語を語るモエナの声を、なんとか日本語で伝えたいと翻訳したスラニー京子さんはこう語っています。

「腹の底から声をふりしぼるように、津波という痛ましい出来事を描くモエナの歌を訳したかった。彼女が津波について語るとき、そこにはどういった思いがあるのか、津波がインド洋を襲った時、モエナは何を見て、何を感じたのか。彼女の声にしっかりと耳を澄まして、どうすれば読者の方々に伝わるのかと考えた。」

絵巻全長180cm、波が滝のように流れ落ち、人々、動物、植物が押し流されてゆく様が描かれています。しかし、皆の表情は苦痛に歪んだリアルなものではなく、このお話を見て聞いておくれ、といっている様です。

語りにの最後に「それまで埋もれていた寺が もうひとつ となりにみつかった 波が砂をさらった そのあとに もうひとつ 寺があったのだ すべてが打ち砕かれた そのあとに 尊いものが たち現れた。」とありますが、これは事実だそうです。マハーバリプラムという観光地に、8世紀にまで遡る遺跡群がありましたが、津波が直撃した後、引潮と同時に、それまで砂に埋もれていた1300年程前の寺院が忽然と姿を表したのです。打ち拉がれた人々にとっては、大きな救いであったことでしょう。

可能ならば、広げた形で部屋に飾っておきたいところです。魂のこもった手作り本が、あなたを励ましてくれるかもわかりません。

 

★釧路ヒッコリーハウスオーナー安藤誠の「ネイチャートーク」が決定しました。10/27日(土)19時スタートです。

参加費は2000円です(要予約)