話題のホラー映画「クワイエット・プレイス」を観てきました。ホラーというジャンルを越えて美的センス溢れる素敵な映画でした。

監督、脚本、製作はジョン・クラシンスキー。クラシンスキー監督の妻で俳優のエミリー・ブランドが主演、監督自身がその夫を演じ、他の共演者と言えば子供たち三人、これでほぼすべてです。場所はアメリカの片田舎のみ。もう、これは低予算映画と言っていいでしょう。

映画は、異星人が地球を襲い、ほぼ全滅の状態らしいところから始まります。この異星人はどうやら視力がほぼ無く、音にのみ反応します。大きい音がすると人でも動物でも襲って殺します。だから、この一家は手話で会話します。監督は、彼らの音のない生活を丁寧に描いていきます。魚はフライパンで焼くのではなく、蒸し焼き。また、フォークとお皿も音が出るというので、葉っぱに包んで食べます。

クラシンスキー監督、考えましたね。エイリアンやらプレデターなど、先行する異星人のキャラには負けてしまう。なら、映像ではなく音で怖がらせ、映画を作ってしまおうと。従ってこの映画の主役は、音です。川や滝の音、風の音、そしてそっと歩く人間の足音。(皆さん素足です)釘を踏みつけて、イタァ〜!と大声出したいのに、ぐっと堪える妻の表情などお見事な演出が続きます。フィルムに寄り添うサウンドトラックさえ、静かに流れていて全然ドラマチックではありません。金がなくても、ハリウッドのプロデューサー連中を振り向かせたる!という気合い十分です。この家族、元々会話が不十分ではなく、普通に話せることが分かるのですが、その時の滝の音の巧みな使い方などの小ワザもバッチリ決まります。

さて、この一家に、新しい子どもが誕生します。え!子どもが泣いたらどうするの?ここは言えません。子どもが生まれてくるあたりから、お母さん、俄然強くなります。「エイリアン2」「ターミネイター」などのヒロインを思い出しました。ただ、異星人が登場すると、キャラの造形では勝ち目がないと思っているのかどうか、演出のテンションが下がります。実際、この異星人、よくあるタイプで、ああまたこれかという感じなのです。お母さんと新生児がこれと対峙するとき、流れ込んできた水の音の演出がここでも見事ですが、異星人の印象は薄い。

しかし、ラストシーンはかっこいい!やはり低予算ながら大ヒットした「ターミネイター」の第一作のラストを思い出してください。未来の戦士を身ごもったヒロインが、黒のレイバンサングラスにバンダナ、そして大型拳銃に強そうな犬を連れて、暗雲立ちこめる未来に挑戦する気合い十分の姿を見せてくれましたよね。「クワイエット・プレイス」には、あのラストへのリスペクトが込められてます。こういう時にドンピシャの関西弁は、「このガキ、いてもぉたるで!」やはりこれでしょう。

90分の上映の間、手にした珈琲をこぼしかけたシーンが三回ほどありました。監督の頭の良さと、ラストの母娘の気合いに拍手喝采で映画館を出ました。お薦めです。

★ 勝手ながら10月22日(月)23日(火)連休いたします。