詩人まど・みちおの詩に、奈良美智、川内倫子、長野陽一、梶井照陰といった写真家、アーティスト達がコラボしたのが、「うちゅうの目」(FOIL/古書900円)です。

「いつのころから こういうことに なったのか きがついて みると みんなが あちらのほうを むいている ひとの いないほうを にじのように はなれて…….。」

という「どうぶつたち」という詩の隣りには、遠くをみつめる馬の目を捉えた写真(川内倫子)。同じ地球に生きる動物達と私たち人間の、どんどん距離が離れている現状を諦めているのか、人と同じ感情を持っているような馬の憂いに満ちた瞳が印象的です。

まど・みちお(本名:石田 道雄)は明治42年生まれの詩人です。25歳で、北原白秋にその才能を認められて、詩作を始めました。多くの作品を発表する一方で、「ぞうさん」や「やぎさんゆうびん」などのユーモラスな作品は、童謡としても親しまれていることは、皆さんご存知の通りです。

決して難しい言葉や、表現を使ってはいませんが、削いだ言葉が、ある時は美しく輝き、ある時は心の奥に突刺さってきます。

「どうしてだろうと おもうことがある なんまん なんおくねん こんなに すきとおる ひのひかりの なかに いきてきて こんなに すきとおる くうきを すいつづけて こんなに すきとおる みずを のみつづけてきて わたしたちは そして わたしたちの することは どうして すきとおって こないのだろうと……。」(「どうしてだろうと」)

原罪とでも言うべきものへの詩人の怒りと悲しみは、戦争に駆り出されていった経験が原点にあるのではないでしょうか。しかしその一方で、私たちは、空を仰ぐ時などに、まだ希望を持てることができます。

「いちばんぼしが でた うちゅうの 目のようだ ああ うちゅうが ぼくを みている」(「いちばんぼし」)

四人のアーティスト達撮った写真はどれも素晴らしいのですが、裸の電球がぶら下がっている古びた家の窓辺に置いてある小物を捉えた奈良美智の写真と、「どうして いつも」という詩のマッチングが見事です。

「太陽 月 星  そして 雨 風 虹 やまびこ  ああ 一ばん ふるいものばかりが どうして いつも こんなに 一ばん あたらしいのだろう」

「NHKスペシャル」で取り上げられて、話題になった詩「れんしゅう」。死ぬということを見つめた美しく、そして厳しい作品ですが、この作品が単行本に初収録されています。

 

★ 勝手ながら10月22日(月)23日(火)連休いたします。