福井さとこさんは、京都嵯峨芸術大学デザイン科卒業後、手描きのアニメーション制作をしていました。その後、世界的絵本作家ドゥシャン・カーライに魅了され、一発奮起、スロバキアのブラチスラバ芸術大学に留学してカーライ氏のもとで版画と絵本の挿絵を学びました。

今回は日本デビュー作「スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん」(JULA出版局)の原画展を開催します。この本は、2017年ブラチスラバ芸術大学版画学科大学院の卒業制作ですが、スロバキアの最も美しい絵本賞(学生部門)を受賞しました。

お留守番中のゆろとはなの兄妹が、想像の世界で様々な冒険をするお話です。お母さんがお出かけした後、寂しがる妹はなを、お兄ちゃんのゆろが、想像という魔法で、はなにステキな世界の扉を開けてくれます。身の回りのものを、何かほかのものに見立てるのは、子どもたちが得意な遊びですよね。二人は椅子の馬やはさみの鳥たち、くつ下のうさぎ、本のフクロウなどと出会い、テントウムシを救い出します。テントウムシはスロバキアでは神様のお使いとして幸せをもたらすと言われているのだそうです。

福井さんがスロバキアで学んだのは、西洋木版。木版画には板目木版と小口木版があり、我々がよく知っている日本の浮世絵などは、板目木版画。小口木版は銅版画のような細かい表現が可能な手法です。ヨーロッパでは、聖書の絵として発達した細かい描写はこの小口木版画や銅版画を駆使したものになります。刷る技法も日本ではバレンで刷り取りますが、西洋木版はプレス機を使います。版木、紙、インクの素材にも違いはあります。福井さんの今回の絵本の原画は、板目木版で、プレス機もバレンも使い、ウィーンで入手した水性インクによる落ちついた色合いで、シンプルで伸びやかな作品に仕上がりました。

絵本の中で、スロバキアのわらべうたが出て来ます。現地で時々ベビーシッターをしていて、小さな子どもたちと接する中でできあがったお話だそうです。勢いのある構図、繊細な色使い、和紙を使って刷った絵には、日本で培ったものとスロバキアで学んだことが、お話の中だけではなく、絵の表現にも混ざり合い、福井さんならではの独特の世界が広がっているように思います。瑞々しい絵本作家の楽しい原画をお楽しみ頂けたら幸いです。ぜひお出かけ下さいませ。(女房)

福井さとこ絵本原画展『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』は1月22日(火)〜2月3日(日) 12時〜20時 月曜日定休  なお、最終日2月3日(日)18時から福井さんによるスロバキアのお話会を行います。参加ご希望の方はレティシア書房までお申し込み下さい。(075−212−1772)