東京新井薬師に、ホントにある「しょぼい喫茶店」の店主、池田達也が書いた「しょぼい喫茶店の本」(百万年書房/新刊1512円)は、起業して成功するための本ではありません。これからの働き方、生き方を考えてみるには最適の一冊です。

「僕は働きたくなかった。ただただ働きたくなかった。理由はよくわからない。」という出だしで本は始まります。なんと甘えたことを!とお怒りのサラリーマン諸氏、まぁまぁ、その気持ちはちょっと横に置いて、著者の思いを聞いてあげて下さい。

著者はアルバイトをしても長続きせず、就活では「会社で使える人間」をなんとか演じる努力したものの、全くダメ。社会人失格の烙印を押された気分で鬱々とした日々を過ごすことになり、挙句に自殺まで考えるようになります。それなりに人生の階段を上がってきて、初めて蹴つまずいた著者は、ここで一人の男性に出会います。”日本一有名なニートphaさんです。彼の著書「持たない幸福論」で出会った「自分の価値基準で幸せを決める」という言葉に心動かされます。

「嫌な人たちと嫌なことをしてお金をもらうよりも、好きな人と好きなことをしていたい。」大正解です。でも、普通のレールに乗って、会社に勤めていたら不可能です。そんな考えは甘えだと言う方が多いでしょう。しかし著者はここから、じゃあ自分の幸福は何か、どう生きていけばいいのかを必死で考えていきます。

ある日、twitterで”えらいてんちょう”という様々な事業を展開している人物に出会います。

「金がないことが貧困なのではなくて、金がないならないなりにやる、ということができないのが貧困。金を得る方法を知っているのが知性ではなく、金がなくても笑って過ごせるのが知性。」

名言ですね。会社員として遭遇する、不条理、我慢の対価として金を得て、それなりの生活を送るのではなく、自分の価値基準で幸せになる生き方を選び、それには自営業が最適と考え、店を持とうと思い、そこから、著者の人生は動き出します。物件を探し、お金を工面し、オープンへと向かいます。このあたりの描写も、よくある開店指南書とは大違いの面白さ。面白いキャラクターの人物が登場し、さながら青春小説です。

中々、上手くいかない状況に、諦め気分の著者に”えらいてんちょう”が言った言葉が、「いや、そんな真面目に考えなくてもどうにかなるっしょ!もっと適当で大丈夫」ってそんなことで、上手くいくか!

ところが人生どうにかなるんです。この本の後半はその記録です。もうダメだと思っていた著者は、店を軌道にのせ、なんと生涯の伴侶まで見つけてしまいます。拍手、拍手です。

嫌なことはしない。好きな事だけを仲間と一緒にやってゆく。金持ちになることを考えず、果てしない消費に突き進むことなく、微笑んで毎日生きてゆく。そんな若い人たちが沢山出てくれば、この社会も、ちっとはマシになるかもしれません。

★勝手ながら、4月22(月)23日(火)連休いたします。よろしくお願いします。なお、ゴールデンウィーク中は通常通り営業いたします。(店主)