「何度かハンドルを左右に切り、24号線に入った。このまま北上すれば、JR京都駅に出る。そこから更に北へ向かい、河原町を御池通まで進むと、その西側が河原町署だった。更にその西側は本能寺だ。」

京都の方なら地図が頭に浮かんだことと思います。今の中央信用金庫の御池支店のあるあたり。もちろん、これはフィクションですので河原町署はありません。

読まなければならぬ本が山ほどあるのに、また警察小説に手を出してしまいました。

「『千本興業』は、京都市下京区の西に事務所を置く暴力団である」なんて、一文が目に入ってしまい、手に取ったのが池田久輝の「沈黙の誓い」(ハルキ文庫/中古200円)です。舞台は京都ですが、いかにも名所旧蹟を散りばめたものではなく、特に何もない場所が多く登場します。主人公の安城友市は、「自宅マンションは京都御所の南、高倉夷川にある。」って、うちの店のすぐ近所にお住まいみたいです。ちなみに著者は京都府生まれ、同志社大学法学部卒業なので地の利があります。

 

7年前に雨で増水した桂川で、刑事だった安城の兄が命を落とします。事件性がなかったので、事故死として処理されたのですが、不審な匂いを感じ取った友市は、兄の死の原因を究明すべく刑事となり、河原町署に配属されます。そこに、不審な手紙が送られてきます。そして、事件が動き出します……。

刑事あるいは探偵小説って、だいたい主人公の行動を追って展開します。しかし、この小説はちょっと変わっています。弟の友市が、今担当している事件と、7年前の兄の行動が交互に出てきます。主人公友市の行動が、章が変わるとパタッと切れてしまうのです。著者は作家であると同時に脚本家でもあるので、映画的センスでこうしたのかもしれません。そしてラストで、兄の死と今の事件がクロスして、隠されていた真実が友市の前にさらけ出されます。闇を抱えた老刑事橋詰など、フランス映画に出てきそうな登場人物のキャラも巧みに描かれています。

「お前のシャツ、何で濡れてるんや」「さっきの雨に打たれました。ですが兄は………もっと濡れていた。桂川に流されて。橋詰さん、教えて下さい。兄がどうしてそうなったのか」

腕のいい映画監督が撮ったら素敵なシーンになりそうです。ただし配役が大事。京都弁の喋れない役者の2時間ドラマにだけはしないで下さい。

 

トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。