村上春樹と柴田元幸の対談を収録した「本当の翻訳の話をしよう」(SWITCH LIBRARY/古書1300円)を一気に読みました。もともと雑誌「MONKEY」に掲載された対談を単行本にしているものなので、柴田ファンは雑誌ですでにお持ちかもしれません。でも、まとめて読むとこの二人が愛してやまない作家、主にアメリカ文学の作家たちのことがよく分かり、二人の創作や翻訳に様々な影響を与えていることが理解できます。

大のジャズ好きの村上が、ジャズの進化発展とアメリカ文学の発展を、上手い具合に述べていました。40年代ダンス音楽だったジャズに、50年代に黒人がビバップという革新的なジャズスタイルを創造し、それを白人が洗練化させていった歴史を踏まえて、「50年代はクリエイティビティと洗練化が上手く歩調を合わせていた時代で、その頃に出されたジャズのレコードはあまりハズレがない。60年代になるとまたクリエイティビティな動きが起こってくるわけだけど、そのぶんハズレが多くなるんです。小説も50年代はハズレがない時代な気がします。」

柴田がその意見に同調すると、村上は続けます。「小説もメイラー、カポーティー、サリンジャー、マッカラーズと、50年代は質のいいものがまとまって出てきている。60年代はそれがはじけてばらけてきます。」

こういった興味深い話がぎっしり詰まった一冊です。私は、先ずはアメリカ映画があってその原作を読みだしました。どちらかというと海外小説に興味のない方にもこの本を読んでいただいて、興味ある作家が出てくれば、一度トライしてみてもらいたいと思います。後半には、二人が同じ文章を翻訳して、どこがどう違うのかトークする場面が出てきます。翻訳の奥深さを知っていただけるはずです。

最も面白かったのは、村上が小説に置ける礼儀正しさを重視しているというところ(P174)でした。柴田が、「礼儀正しさというのは登場人物の振る舞いのことですか。」と問い返すと、村上は「上手く言えないんだけど、文章を書く姿勢というか心持ちというか。」と答えます。

さらに柴田が「ヴォネガットがディーセンシー(decency=まっとうさ)という言葉を使いますが、それとも違いますか」と迫ると、村上は「似ているかもしれない。」と前置きして、彼の論を展開していきます。立ち読みでも、ぜひご一読を。

 

トーク&ライブのお知らせ  

7月13日(土)18時30分より 『澤口たまみ(語り)石澤由男(ベース)ライブ』

今年1月、当店で行われた「宮沢賢治愛のうた」(澤口たまみ著)出版記念イベントのお二人のトーク&ライブが再びやってきます。澤口たまみがさんが岩手のイントネーションで賢治作品を朗読。ベーシスト石澤由男が伴奏を添えます。 朗読作品は、岩手の自然を見つめ、野原や林からおはなしを貰ってきたという「鹿おどりのはじまり」他を予定。

●18時受付開始  18時30分より (2000円)ご予約ください。