1940年、アメリカに生まれた絵本作家、M.B.ゴフスタインは、様々な手法で絵本を製作してきました。今回入荷した「おばあちゃんのはこぶね」(現代企画室/新刊1620円)は、ほとんど線だけで描いたモノクロームの世界ですが、心に染み込みます。

おばあちゃんが子供だった時に、お父さんが、ノアの方舟と動物たちを木で作ってくれました。大きくなるにつれて、お父さんは動物たちを増やしてくれました。彼女はそれらを心から愛します。

「いまでは ぬりもすっかりはげている」

おばあちゃんは今も方舟をそばに置いて見つめています。父母はとうに亡く、自身も結婚し子供を育て、そして「みんないなくなってしまったいま、はこぶねはおもいででいっぱい」とベッドに横たわりながら回想します。

「よろこびとかなしみはにじのよう、それがわたしをあたためてくれる おひさまのように。」

おばあちゃんが、自分の長い人生を肯定するところで絵本は幕を閉じます。巻末に、亡くなる直前の彼女の言葉が載っています。

「ねえ、私、良い人生を生きたと思うの。素晴らしい、人生を。12月20日には77になるのよ。死ぬことは構わない。まったく。別れたくない大切な人たちはいる、もちろん。でも….死は私の友達。死と、希望。希望。」

彼女は77歳の誕生日にこの世を去ります。生きて、死ぬことを簡潔に描いた傑作絵本です。

表紙の絵。窓の外、雨を見つめる後ろ姿のおばあちゃんは、何を思っているのでしょう?90才になった短いような長い時間に思いを寄せているのかもしれません。
 谷川俊太郎は、ゴフスタインの「ぶるっキーのひつじ」「ふたりの雪だるま」「生きとし生けるもの」等の作品も翻訳していますが、本作でも静けさと淋しさと喜びをシンプルな文章で日本語にしています。詩人ならではと思います。 

 

 

★地味だけど、渋い大人向けの絵本を10冊程入荷しました。(すべて新刊)

おいおい紹介していきますが、全冊表紙を見せて店内で展示していますので、ぜひ手に取ってご覧ください。