台風が近畿地方に近づきつつある不安定な天気ですが、古本市は今日も開いております。

京都市左京区にある書店「ホホホ座」は、本好きなら知らない人はいないほどの有名店です。絵本「やましたくんはしゃべらない」(葉月と友だち文庫出品/岩崎書店1000円)は、「ホホホ座」店主の山下賢二さんがユニークな自らの少年時代を描いた素敵な絵本です。彼は小学校に入学してから、卒業するまで学校内で一言も喋らなかったのです。別に病気だったわけではありません。絵を描いた中田いくみが、俺は喋らないと決めた山下くんの表情を生き生きと見せてくれます。固い決意で最後まで押し通す山下くんですが、卒業式の微笑ましく、ちょっと切ないエピソードが素敵です。著者のサイン入りです!

食に関する本は、今回参加しているどの店からも出品されているのですが、最もユニークだっだのがこれです。熊田忠雄「拙者は食えん!サムライ洋食事情」(榊翠廉堂出品/新潮社600円)。この本は、日本が開国し新しい時代を迎えた明治初期、海を渡った幕府の各使節団や、諸藩が海外に送った留学生たちが、初めて目にする洋食といかに向き合ったかを調べ、未知の食文化をどのようにして受け入れていったのかを描いたノン・フィクションです。

米と魚と野菜を食べて育ってきた彼らが、いきなりパン、肉、乳製品に出会った時には、とんでもないカルチャーショックを受けたと思います。著者は、そんな彼らの心情を丹念に拾い出していきます。拒否感の多かった西洋料理ですが、当時日本にはなかったアイスクリームだけは、「たちまち解けて誠に美味なり」と絶賛だったそうです。ユニークな視線で開国当時の歴史を見つめた一冊。

村山槐多と共に大正画壇で活躍し、20歳で亡くなった画家関根正二の生涯を追った「青嵐の関根正二」(徒然舎出品/春秋社600円)は、とてつもなく面白い本です。著者が村山槐多の作品を見に美術館に出かけた時、こんな経験をします。

「『俺を見よ!』 おかしい。ぼくの他には誰もいなかったはずである。横を向くと、黒っぽい服を着た三人の男女が描かれている一枚の肖像画があった。

『?』空耳だろう、絵がしゃべるはずがない、と思い直し、また槐多の絵の世界にひたっていると、今度ははっきりと聞こえてきた。 『俺を書け!』」

まるで小説の滑り出しみたいですが、これが著者と関根正二の出会いでした。「新宿鮫」でお馴染みの大沢在昌が、「この本にあるのは、純粋に、己が目で確かめようとする作家の姿勢だ。問いかけ、答を胸で喰み、さらに素朴に次の問いへの答を探してゆく。美術にはまったくの門外漢である私にも、目がはなせない。」と、帯に推薦の言葉を書いていますが、本当に目が離せない伝記です。

 

 

★「夏の古本市」は18日(日)まで開催しています。(最終日は18時まで)

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。