第八回の「夏の古本市」も、いよいよ明日が最終日(18時まで)。というわけで「『夏の古本市』こんな本あんな本」も本日が最終回となりました。紹介した本が次々と旅立ちました。読んでいただきありがとうございました。

小島信夫著「こよなく愛した」(らむだ書店出品/講談社2200円)。個人的読書体験ですが、小島の本は最初に全3巻にもなる「別れる理由」にチャレンジして、途中で挫折して以来、読んでいませんでした。老夫婦の暮らしに流れる孤独、不安、そして愛すべき人生を綴ったエッセイのような短編集ですが、一筋縄でいかない所が、小島の世界です。この人の小説って、スルスルとは読めません。会話のズレや、食い違いを楽しみましょう。最晩年に書かれた「養老」は、かなりユニークな小品です。

文芸評論家の饗庭 孝男が、京都の古寺を歩いて、その風景を綴った「中世を歩く 京都の古寺」(本は人生のおやつです出品/小沢書店1000円*著者献呈署名本)は浄瑠璃寺、神護寺、仁和寺などの古寺を歩きながら中世文学と思想への思いを込めながら、思索したアカデミックな一冊です。

「灰色の空から雪が舞い落ちてくる。その白さに咲きはじめた梅の紅色が入りまじり、黒ずんだ北野の御社の堀がその背後の幻想のようにうかんでいる。これは二月も半ばの、昔からの北野の風景であるが、本殿に続く石畳の道をわが子の合格を祈る母たちが足しげく通ってゆくのは今日の風景であろう。」

で始まるのは北野神社の風景です。観光客でごった返す昨今の古寺の風情と違う、静謐で、ゆっくりとした時間の流れる古寺を著者と共に散策するような名著です。

誰これ?という興味津津の本がありました。若林純著「謎の探検家菅野力夫」(徒然舎出品/青弓社800円)。明治末から昭和初期にかけて世界中を探検した男です。表紙(写真左)のように、探検家ルックでポーズを取り、手には骸骨を持っている姿を写真に撮り、それを絵葉書にして売っていた男。経歴不明、どんな探検を行ったのかも明らかになっていない菅野に興味を持った著者が、彼の足跡を丹念に追いかけるノンフィクションです。彼の撮ったフィルム5700枚、探検旅行を集めたアルバム20冊、膨大なスクラップに旅の記録。膨大な資料の山に挌闘しながら、この怪人の姿をあぶり出していきます。

絵葉書コレクターの間では、菅野の絵葉書は有名なのだそうです。

★「夏の古本市」は明日18日(日)の18時まで開催しています。

勝手ながら、19日(月)〜23日(金)まで休業いたします。