みなみ会館で上映中の「ボーダー」を観てきました。イラン系デンマーク人の新鋭アリ・アッバシ監督と、原作者ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト(「ぼくのエリ 200歳の少女」原作者)が、共同脚本を手掛けた本作は、カンヌ映画祭「ある部門」で見事グランプリを獲得。第54回スウェーデン・アカデミー賞で作品賞をはじめ最多6部門を受賞するなど国際的に高い評価を受けてきました。映画祭で「ショッキング過ぎる」と話題になったシーンもあるのですが、修正は一切無しで、ノーカット完全版での日本で公開されました。18歳未満はアウトです。

ポスターを見たとき、醜い容貌の女性が、自然の生き物と交流するようなファンタジーかなと思っていたのですが、見事に裏切られました。怖い映画見ても滅多に目を背けないのですが、何度か俯いていました。オカルト映画でもないし、エイリアンも登場しません。根源的な生を見せつけられたからです。

スウェーデンの税関勤務のティーナは、違法な物を持ち込む人間を嗅ぎ分ける能力を持っていて、違反者を摘発していました。臭いだけではなく、その人物の破廉恥で邪悪な隠したい感情までかぎ分けるのです。しかし、人間離れした容貌のため世間から孤立し、山の中の一軒家で暮らしていました。

ある日、彼女は勤務中に怪しい旅行者ヴォーレと出会います。同じような顔つきのヴォーレを見て本能的に何かを感じたティーナは、彼を自宅に招き、離れを宿泊先として提供します。次第にヴォーレに惹かれていくティーナ。が、彼はティーナの出生にも関わる大きな秘密を持っていたのです。

彼も彼女も、実は人間とは違う異形のものだったのです。映画は、そんな彼らの悲しい過去を描きつつ、この二人の生き方を見つめます。仲間を人体実験にされたヴォーレは、人間への憎しみに満ちていますが、それなりに人間社会で生きてきたティーナには、人間としての優しい感情があります。後半、獣なのか人間なのか判別できない様相を見せながら二人の葛藤を描いていきます。。

私たちの価値観、倫理観、偏見などを破壊しながら、化け物映画、SF 、謎解き映画、ダークファンタジーといったジャンルさえ超えて、新しい地平へと映画は進んでいきます。二人のセックスシーンは、従来の映画の概念をぶち壊してしまうほどの迫です。そりゃ「行き過ぎ」という意見もわかります。

ラスト、ティーナが同じ種族の幼児を抱きかかえて、微笑むところで幕を閉じます。人間の奥深い偏見、暴力、格差を考えると、この二人が幸せになる可能性は薄く、大きな虚しさと切なさがこみ上げ、そんな感情を持ったまま映画館を出るはめになりました。そういう意味では残酷な映画かもしれません。しかし、映画の表現力はここまで可能なのだということを、明確に示した作品でもありました。

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