「馬語を学ぶための第一歩。それは、ウマを『感じる』ことです。」で始まった「馬語手帳」(カディブックス/1320円)を販売し始めたのが、約5年前。

その後、「夜明けまえ、わたしは車に乗って、カディのところへ行きます。牧場に着くと、車の音を聞きつけて、あるいは名前を呼ぶわたしの声を聞いて、カディは森から出てきます。」と、カディと名付けられた馬と暮らし始めた日々を綴った「はしっこに、馬といる」(1870円)が出たのが4年前。

そして、ついに3作目「くらやみに、馬といる」(990円)が発売されました。最初の「馬語手帳」が出た時は、売れるかなぁ〜と思っていたのですが、これが大間違い。当店だけでも数十冊、30版というリトルプレスでは信じられない重版です。与那国島でカディと暮らす著者の河田さんの飾らない文章と、馬を見つめる視線に、心地よさを感じた人が多かったのだと思います。私も、何度も開いています。

「くらやみに、馬といる」は、前2作より小ぶりの装丁で、文章と馬の写真で構成されています。深い森の奥にいる馬たちに深夜、逢いに出かけた彼女の文章が素敵です。

「それにしても、馬とくらやみにいることの、このおだやかでしみわたるような喜びはなんなのだろう。人生で初めて経験する感情だった。私が暗闇のなかで、こんなにもくつろいだ気持ちでいられるのは馬がいるからだ。カディや私の知る馬たちがくつろいでいる、それを感じているから私もくつろぐことができる。」

この島に来るまで、彼女は東京で編集者として忙しく働いていました。おそらく、精神的にも肉体的にもかなりキツかったのでしょう。これからの人生に不安を感じた時、カディがこっちにおいでよと誘ったのかもしれません。島に渡り、カディブックスという出版社を立ち上げ、本を出しながらの生活。東京にいた頃より、経済的にはシンドイと思いますが、常に心は満たされているという、理想の生活を得たのかもしれません。以前の暮らしをこう書いています。

「あらためて観察してみると、普通の暮らしだと思ってやってきたことのいくつかは、思っている以上にたくさんのエネルギーを費やして成り立たせていたものだということがわかった」

ところがこの島では、ある日、風雨を避けるためカディと、よく見かける野良猫と一緒に雨宿りをする羽目になった時に、一人と二匹で過ごした時間は穏やかなのです。

「カディと猫と私でくらやみにいた。雷鳴と雨音に包まれながら、なにもしないでそこにいた。なんと豊かな時間だったことだろう」

彼女の本が多くの読者に支持されているのは、本当の豊かさを知っているのだけれど現実の生活に追われている人たちが、ほんのひと時、自分の心をゆっくりさせてあげようと思っているからかもしれません。

 

「あたたかいくらやみに、馬といる。頭上には空が広がっている。空と地面との境界がどこなのかわからない。風が頬をなで髪をゆらしている。風と自分の境界がどこなのかわからない。私は静かに拡散している。生と死のどちらにいるのかわからない。わかるのは、親しい存在がそばにいる、ということだ。」

彼女はカディと共に生きて、いつか訪れる死までも見つめています。

 

 

 

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