海外文学の面白いところを取り上げる無料のミニプレス「BOOK MARK」の15号が入りました。特集は「Be  short!」と書かれているように、短編小説の特集です。このセレクション見事です。欧米や非英語圏の文学から、刺激的な短編集が15作品選ばれています。

以前ブログでも書いたピョン・ヘヨン「モンスーン」(白水社/古書1600円)も、取り上げられていました。翻訳した姜信子さんが、「不穏です。9つの短編に、9つの日常から洩れでる、9つの密かな叫びがこだましているんです」と解説していますが、まさにそんな物語が詰まっています。

台湾フェミニズム作家リー・アンの短編集「海峡を渡る幽霊」(白水社/古書1800円)は、以前から在庫していた本です。この作家の長編を読んだ記憶があります。人々を締め付ける土俗的風習や情念を、とある殺人事件を通して描く「夫殺し」。凄まじい暴力を振るう夫も、それを容認する人々も、実は極めて孤独な存在だったという視点で語られていました。緻密な執筆力は、この短編集でも生かされています。本作で全ての物語に貫かれているのが、中国語で「鬼」と呼ばれるお化けです。お化けが象徴するものが何かを探してください。

さて、とても刺激的な海外文学を入荷しました。アティーク・ラヒーミーの「悲しみを聴く石」(白水社/古書1550円)です。植物状態で戦争から戻ってきた夫と彼を看病する妻を描いているのですが、回復の見込みのない夫に向かって、妻は自らの罪深い秘密を語り出します。

「透き通った皮膚の下には、静脈が、ぼろぼろの身体から張り出した骨に、窒息しそうなミミズのように絡まっている。左の手首には自動巻の時計、薬指には金の結婚指輪。右ひじの裏側には、カテーテルの針が刺され、頭上の壁につるされたプラスチック製のバッグから、色のない液体がしたたり落ちている。」

滑り出しから緊張感と、奇妙な静謐感に交互に押し寄せてくる長編です。

著者は、アフガニスタン出身の作家であり、映像作家です。アフガニスタン紛争の最中にフランスに亡命し、映画学を学びドキュメンタリー作品を制作。1999年、故国の現状を描いた小説「灰と土」を発表して、後に自ら映画化もしています。