新刊書店に溢れるヘイト本について作る側、売る側の思惑を追いかけた永江朗「私は本屋が好きでした」(太郎次郎社エディタス/新刊1760円)は、新刊書店の現状を深く掘り下げた一冊で、少なくとも、新刊書店員は須く読んでおきたい本です。

本の紹介に入る前に個人的な体験を一つ。私が新刊書店勤務時代は、これほど多くのヘイト本は出ていませんでしたが、それらしい本は日々入荷してきました。署名も著者も忘れましたが、とある本のあまりに幼稚な内容の偏りに、入荷即返本をしたところ上司に注意されました。その時の指摘は、1.本の選別をするのは書店ではなく読者だ。2.書店は組織で動く営利企業だから利益第一だ。という二つでした。わかりましたと言ったものの、モヤモヤ感は残り続けてきました。この感じは、もしかしたら今の本屋を立ち上げる遠因にもなっていたのではないかとも思います。

で、そのモヤモヤ感が、この本を読んでスッキリ解消。なるほど、そう言う事だったのかと納得しました。永江さんありがとうございます。(永江さんにはお世話になりっぱなしです)著者はこう書いています。

「ヘイト本を『仕事』だからと割り切ってつくる編集者、『仕事』だからと割り切って広告宣伝し、営業する担当者は、『仕事』だからと割り切って原発を動かしつづけたり、廃液を垂れ流したりする公害企業の従業員や経営者と似ている。彼らもまた、手を汚している。」

そして書店については、「これは想像力の問題だ。店頭にヘイト本を並べている書店員は、その本が入荷した時、その本を見た人がどんな気持ちになるか想像していない。自分が働く書店にどんな客が来るのか想像していない。」

「韓国人出て行け」なんて本を在日コリアンの子供や、観光で日本に来た韓国の人々が見たらどう思うか。書店に入ったら、「京都人は醜い、臭い」なんて本が置いてあれば、「なんや、気分悪いわ〜」と一緒ですね。

では何故この手合いの本が並ぶのかについて、著者は旧態依然とした流通制度にメスを入れています。もちろん、悪戦苦闘している書店員たちの現状を常に頭に置きながら、どうあるべきかを論じていきます。

「入荷してきたヘイト本を書店員が店頭に並べるたびに、その街の誰かを傷つけ、泣いている。そのことを出版業界にいる者は無自覚ではいけない。」これは肝に命じておかねばならない言葉です。

ところで、青林堂という出版社をご存知でしょうか。漫画雑誌「ガロ」を出し、漫画界のニューウェーブを引っ張った出版社です。しかし今、青林堂は確信犯的にヘイト本を出しています。え?あの出版社が?と、私もこの本で知って驚きました。

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