イギリス生まれの絵本作家、スーザン・バーレイが、1984年に発表した「わすれられないおくりもの」(評論社/古書850円)は世界的に注目され、今も売れ続けています。

森に住む老いたアナグマは、森の仲間たちに慕われていました。しかし、「長いトンネルの 向こうに行くよ さようなら アナグマより」という手紙を残して、天国へと旅立っていきます。悲しみにくれる仲間たち。けれど、冬が去り春が訪れる頃、みんなは彼が残していった豊かさを心の中に残すことで、少しづつ悲しみを癒していきます。肉体は滅んでも、彼の言葉や教えてもらったことは永遠に残ると悟った友達のモグラは春の大空に向かって、「ありがとう、アナグマさん」と呼びかけます。

「モグラは、なんだか、そばでアナグマが、聞いてくれるような気がしました。そうですね……きっとアナグマに…..聞こえたにちがいありませんよね。」

ラストの春の大空に向かって声を出すモグラのシーンがとても素敵で、愛したものの魂は、いつでもそばにいるよ、という感じが良く表されていると思います。

三木卓は「鶸」で芥川賞、「路地」で 谷崎潤一郎を受賞した文学者です。三木が物語を作り、スーザン・バーレイが日本語を英語の翻訳し、絵を描いた作品「りんご」(かまくら春秋社/古書900円)を入荷しました。海外の作家のものを、文学者が日本語に翻訳したものは沢山ありますが、その逆のパターンは珍しいと思います。       

話は山の中に捨てていたりんごの芯を、森の動物たちが育てるというものです。左ページに日本語と英語、右ページに絵が配置されています。

「春になって 木は はじめて 白い花を いっぱいにさかせました。」

“Spring came  For the first time the tree was full of white flowers”

難しい英語ではありません。なんとなく音読したくなってきます。体の中に言葉がすっと入ってくる感じです。こういう文章を英語の勉強に使えばいいのに…….。

ところで、三木卓の新刊(?)が、新しく立ち上がった出版社、水窓出版から出ました。「ミッドワイフの家」(新刊1980円)という短編集です。昭和48年に一度講談社から出版されtものを復刻したものです。三つの短編が収められていますが、「炎に追われて」は童貞であることに苦悩する若者が、童貞を捨てる様を描いた物語です。

「わたしは和子の歯を舌で愛撫し、口を開いてくれることを望んだ」なんていう、古色蒼然として文章に出会うと、なんだかなぁ〜と思いますが、雑誌に発表されたのが昭和48年。あの時代では、こんな物語を書く人は少なかったのでしょうか。

三木卓の違った側面を知った気分です。

 

 

 

 

予告

12月11日(水)から始まる知床在住の絵本作家あかしのぶこさんの絵本展に、知床のパン屋さん「メーメーベーカリー」からパンが届きます。シュトレンも含めて20個ほどのパンは、初日のみの販売になりますのでお見逃しなく。